前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第22回
持つべきものは良き友です

そして三年目の春。
私の友人が日本からデンマークに遊びにきました。
いつも私達が日本に行くと何日かは泊まってくるという、
一方的にお世話になっている間柄です。
この時は反対に初めてうちに泊まって行きました。
その彼が私が働いてるのをじっと見ていましたが
「正博、働きすぎだよ」
と言い出しました。
「まあそうだけど、でも自分の店だからしかたないでしょう?
働きながらもう一軒見るのはきついけど」
などと会話をしていると、後から意外なことを話し出しました。
「僕は遺産を貰ってお金持ちになってしまったから、
正博が楽になるなら利子無しでお金を貸してあげられるよ。」

と、いうことでありがたい志を受けて、
なんと無利子で晴れて共同経営に移行できることになりました。
数年後にこの時のお礼の意味も(心密かに)兼ねて、
私は彼が新しく始めた長野の試験農場に
北欧の家を建る手伝いに行きました。
「ゼロエネルギーハウス」という名の家を建てたのです。
デンマーク人の大工と、
その助手としてプレイ・グランドの元子供を連れていきました。
この子とはプレイ・グランドで一緒に囲碁を覚えた仲間です。
私もまったくルールを知らなかったので
小さな「初歩の囲碁」という本を買ってきて勉強しました。
ヤンという名のこの子はその後囲碁熱が高じて、
囲碁の本を読むために日本語の勉強を始めました。
そして今は大学の日本語科に在籍しています。
ヤンは囲碁の方は一級になりました。

さて「ゼロ・エネルギー」というのですが、
キッチンや風呂のエネルギーは要るけれど
冷暖房はいらないという触れ込みです。
実際に建ってみると冬は勿論気持ちの良い暖かさです。
それに夏も炎天下の外から入ってもひんやりと心地よいのです。
家全体を包んだ断熱材は最低でも20cmはある家です。
熱交換装置は
冬の間は炊事や風呂の際に外に消えていく熱を利用して、
外から入ってくる空気を温めるのに使います。
私はヨーロッパでも
この北欧の建物の住み心地が本当に気に入っていました。
ですから、「日本の代理店にならないか」と
そこのデンマークの建築会社から友人が誘われた時にも勧めました。
こうして代理店のサンプルの建物として
特別価格で輸入ができたのです。
でも結局、家はそのサンプル一つだけで
後は全く売れませんでした。
引き合いは幾つか有ったんですが、
私の友人も商売には向いていなかったんですね。


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2004年8月17日(火)

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