前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第51回
西のかなたの空遠く

デンマークには国民学校という名の学校があります。
主に全寮制で短期間だけ開校して費用は一部だけ自己負担です。
希望者は16歳以上の年齢であれば誰でも入れます。
私がデンマークに来て間もない頃
4ヶ月間在籍した学校はユトランド半島にあって、
学科は音楽の授業が主体でした。
なぜそこを選んだかというと、
音楽なら授業がデンマーク語でも
なんとか後をついていけるだろうと思ったからです。
申し込み用紙には
学校のオーケストラで演奏したい楽器名を書く欄がありました。
楽器は借りることができる、とのことでしたので、
あまり考えずに「オーボー」と書きました。
実は、オーボーはそれまで触ったことさえなかったのですが、
音色が好きでちょっと吹いてみたかったのです。

無料で間借りして3ヶ月間お世話になったニルス達と別れて、
コペンハーゲンの南の町からユトランド半島に向かいました。
電車、フェリー、電車と乗りついでその町に着くと、
外はもう真っ暗で吹雪が舞っていました。
バスで一時間走ると“西樺村”という村のはずれに、
雪を被った古い古いレンガ造りの学校が有りました。
「思えば遠くに来たもんだ」の感がありました。

翌朝になって驚いたのですが、学校は私の為に
オーボーという高価な楽器を買ってくれていたのでした。
オーボーはそれまで学校のオーケストラには無かったのです。
おまけに音楽大学の卒業も間近な学生が、
私だけの為に週二回教えに来てくれたのです。
車で一時間もかかる道のりでした。
そうとは知らず軽い気持ちで申し込みましたが大変な事でした。
こんなにしてもらって、
こんなにたくさんのデンマークの税金を
外国人の私が使ってしまって良いのでしょうか?
責任を感じて私なりに必死で毎日練習しました。
後で先生から
「オーボーは初めが難しいから
一ヶ月で止める人が多いけど、あなたは4ヶ月間良く続いたね」
という微妙なお褒めをいただきました。

大学も無料なので、過去3年間に
ユトランド半島の小さな大学に中国人が200名も在籍しました。
「私達には中国国民全員の教育を引き受ける余裕はありません。」
と、ユーモアを交えて
オーバーにコメントする大学関係者もいたり、
外国人は有料にしようという政治家もいます。
救急病院は外国人でも無料です。
デンマークはヨーロッパでも一番税金の高い国ですが、
今年のアンケート調査でも、
三人に二人は「高くてもよろしい」そうです。


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2004年9月27日(月)

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