前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第103回
奥様の縄張りで

初めて香港に旅行して
福臨門に行った前日にこんな事がありました。

着いた日に香港島の数十万の人ごみに揉まれながら、
ぼんやりと二人でメイン・ストリートを歩いていました。
初めて見る香港の町は、
当然ながらデンマークの町とは違う見掛けの人が沢山いました。
中には私達の知っている人にそっくりで、
思わずハッとしてしまう人達と擦れ違うのでした。
“成る程日本人には先祖が中国人という人も多いんだな”
と感心しました。

そうやって歩いていると、交差点の向こうから手を振って、
何か叫びながらこちらに向かって走ってくる人がありました。
それが又また知っている人にそっくりで、
“前川さーん”と私達に呼びかけているようにさえ聞こえました。
“まさかねえ”
すると妻は「ああら、Sさん」と手を上げて返事をしたのでした。
まるでスーパーで近所の人に出会ったような能天気な声でした。
それがなんと、近づいてみると
それは本物の日本人のSさんなのでありました。
同じコペンハーゲンに住みながら、
この二年間は一度も会ったことも無い人でした。
ビックリして喜んで話を聞くと、
長いこと海外に出ていなかったSさんは、
私達と同じく香港は初めてなのでした。

Sさんはその頃、
Qさんと奥様がコペンハーゲンで食事に入ったこともある、
広東料理のレストランでコックをしていたのです。
そのお店の持ち主の中国人は台湾から来た人で、
Qさんの奥さんの実家の
漢方の大きな薬屋さんを良く知っていました。
「奥様のおうちの薬には子供の頃からお世話になりました」
と丁重に挨拶されたそうです。
それで奥様は
「ごらんなさい。ここでは私の方が有名ですよ」
とQさんにお威張になられたそうです。

コペンハーゲンの広東料理のレストランに、
一人の疲れ果てた中国人男性がやってきました。
彼は天安門事件にかかわってデンマークに逃げてきましたが、
言葉も分からずに途方にくれていました。
人が良くていつも親切なSさんは、
その人の保証人になり面倒をみて色々助けてあげました。
それからしばらくして香港からSさんに手紙が来ました。
みすぼらしい身なりのその人には
お金持ちの兄さんが香港にいて
Sさんはその手紙で招待されたのでした。
Sさんは金細工のお店で余所見をしながら値切っていると、
道の向こうに私達2人が歩いているのが目に入ったそうです。
“まさかねえ”とSさんも一度は思いましたが、
2人とも“そっくり”なのでこれは本物だと分かったそうです。


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2004年12月8日(水)

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