前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第283回
高飛び込みの実際

私の店に夏のアルバイトに来たデンマーク人トリーナは、
週1、2回水泳教師のアルバイトもしていました。
ユトランド半島の田舎からやってきた、
写真家希望の24歳の女性ですが、水泳も得意なのでした。

ある日トリーナは青ざめた顔で店にやってきました。
見ると小刻みに震えています。
尋ねると「生徒がプールの底で溺れました」と言います。
デンマークのプールは、必ず飛び込み台があって、
半分は飛び込み用に深くなっています。
その底ならかなり深いのです。
「それで?」と尋ねると。
「助けたけれど。私、初めてだからビックリして、
体が震えてまだ止まらないのです」
と言います。
かなりショックだったようです。
その日はそのまま帰ってもらいました。

思い出しましたが、私も自分の意思に反して、
プールの底に少しの間いたことがありました。

私は小さい頃肺結核を患い、水泳を禁止されていました。
それで大人になってからもろくに泳げないのでした。
ところが知恵遅れの子供をプールに連れて行って、
久しぶりに水に入りました。
デンマーク人の同僚は「簡単だよ」と言って飛び込んで見せて、
しきりに勧めるので、私も高い飛び込み台から飛んでみました。

テレビでオリンピックの高飛込みを見ていると、
真っ直ぐ身体を伸ばして水に入るので、その真似をしてみました。
すると、飛び込んだ後で目を開くと、
直ぐ目の前にプールの底がありました。
見上げるとかなり上の方に水面があります。
”はて、前に泳ぐのはやったことがあるが、
上に行くにはのはどうするのかな?”と、私は考えました。
「子供を海に放り込んで泳ぎを教える」
という漁師の話を思い出しました。
それで”何とかなるものだろう”と思って、底をけり、
後は何も考えないで上に向かって手足を動かしてみました。。
顔が水から出ると「ああ、上がってきた」と言う声が聞こえました。

後で「普通はどうやって上がってくるのですか?」と尋ねると
「飛び込んだら、身体をそらせると、
勢いでそのまま簡単に水面に頭が出ます」ということでした。
飛び込みをけしかけた人に
「泳げると思ったよ。あそこで溺れたら私は助けられないよ」
と、後で脅かされました。
それ以来一度も飛び込んでいません。


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2005年8月16日(火)

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