前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第307回
超低音の神秘

教会のバイプオルガンは、
人の耳には聞こえない超低音を出せるものがあるそうです。
何でわざわざ聞こえない音を出せるようにしてあるかというと、
神秘的な雰囲気を出すためなのだそうです。
それで「32フィート」呼ばれる10m近い長いパイプなどがあります。

30ヘルツの音を人が感じると、
寒気がしたり気持ちが悪くなる人が出てくるのだそうです。
神秘的雰囲気とは気持ち悪い感じに近いのでしょうか。

私の友人は私からその話を聞いて
「自分は60ヘルツで気持ちが悪くなったことがある」
と言い出しました。
友人はベースギターの演奏家でもありますが、
コンサートの準備などもたまに請け負うのです。
彼はベース演奏用の大型スピーカーのテスト中に、
60デシベルの音を試していました。
すると、自分もそこにいた仲間達も、
一斉に気持ちが悪くなってきたそうです。

何年か前、日本人のオルガニストが、
人魚の像から近い古い教会でコンサートを開きました。
オルガンは宗教儀式の主役ではないので、
観客は演奏者が見えずに背中の方から音が聞こえてきます。
演奏直前に行くと、
その後ろ向きの席はすでに満席になっていたので、
上の階に登りました。
すると、そこは奏者の背中が少し見えて、
教会の内部全体全体が見下ろせる良い席なのでした。

バッハの「パッサカリア」の初めの音が建物の内部に響き渡ると、
私は身震いしてしまいました。
オルガンも良いのでしょうが教会の音響効果も良くて、
迫力のある音に全身が包み込まれました。
荘厳な音の響きの連続に、
眼下に見える観客も演奏の間は感動で身動きもできないようです。
演奏が終わり、
教会全体を埋め尽くす音がふいにとぎれてしまっても、
一瞬、誰も反応できませんでした。
そして、激しい拍手がいつまでも続きました。

グルメの孔子さんも名演奏を聴いて、
好物の肉の味が分らなくなった、と言ってましたが、
音楽の力というものは時に大したものです。


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2005年10月3日(月)

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