さすがのアメリカも事の重大さに気づいて、サマーズ米財務副長官が北京入りをして確約をとった模様だが、今回の通貨不安のなかで人民元がいまのレートを貫くことができたら、中国はドル台風の被害を被らなかったどころか、ドル洪水をうまく利用して経済の開発に成功したほとんど唯一の国であったということができよう。
仮に輸出のピンチに遭遇して、人民元を切り下げざるをえなくなったとしても、所得の増大によって新しく増えてきた国内需要がある程度カバーしてくれるだろうし、他の国々の通貨が一段落したところで、人民元が再度、平価の切り下げをやっても、アジアの通貨が落ち着きを取り戻したあとなら、たいした連鎖反応をともなわないですむだろう。
むろん、通貨不安に見舞われなかったからといって、中国に問題がないわけではない。
さし迫って解決を要求されているのは、国有企業の救済である。多くの国有企業が倒産寸前まで追い込まれ、倒産するか、身売りをするか、それとも上海や香港の株式市場に上場して新規の資金調達を迫られる瀬戸際にきている。
西側のチャイナ・ウオッチャーたちはそれを中国の経済的危機と見ているが、私は共産主義計画経済から市場経済に移る過程で避けて通れない隘路を通過しているところと見ている。だから、怪我や落伍者を出すことは覚悟しなければならないが、どこの国有企業も膨大な土地をタダで所有しているから、その一部を処分しただけで従業員の退職金は払えるし、外国資本と合弁したり、他社と合併するときの資本として供出することもできる。
したがって、資本主義の国の人が考えるほど難しい立場にはないのである。
問題は整理される国有企業に代る新しい企業が育つかどうかであって、そのために株式会社化が政策として取り上げられたのだが、地方の中小企業なら郷鎮企業がそれに代ることが考えられるし、製鉄とか、石油化学とか、巨額の資本を要するものなら、上場と外国資本の導入が積極的にすすめられるであろう。
今回の通貨不安ではっきりしたことは、外国資本をいくら入れてもそれが生産に投ぜられる長期資本なら逃げ出す心配はないが、短期の借り入れや株式投資資金では駄目だということである。IMFが緊急融資の条件として債務国に押しつけているのは、長短期資金を問わず、外国からの投資を自由化することだから、そのなかには今回の通貨不安をさらに増幅させる要素も含まれている。わけても外貨のコントロールのできないことに中国は不安を募らせている。
だから口に出してこそいわないが、おそらく中国はWTO(世界貿易機関)に加盟する必要を感じている一方で、通貨不安を避けるためにWTOへの加盟を遅らせようとする様子もうかがえる。これはまたマレーシアのマハティール首相がIMFの世話になりたがらない理由でもあって、今後、アジアの国々が経済の独立を守るための大きな教訓になっている。
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