台湾の人たちにとって困ったことが起っても政府は頼りにならないし、不況に遭遇して倒産しても救済の手を差し伸べてくれる人はいない。当然のことながら事業の拡大には慎重で借入金も少ないし、借りているといっても十分な担保をさし入れて地元の銀行から借り入れているだけで、ドル建ての借金というのは一般の企業ではほとんどない。市中銀行が外貨を借り入れるについては中央銀行の認可が必要だし、それほどまでしなくともどうにか間に合う範囲内でしか設備投資はしていないから、日本の企業に比べても自己資本が多く、いわゆる健全経営の部類に属する。
台湾の企業は、労働集約的な生産事業が主流で、労賃の高騰や為替レートの影響を受けやすい。とりわけ後発の中国大陸や東南アジアの新興勢力と厳しい競争関係におかれている。それだけにつねに危機意識をもっていて、変り身が速く、台湾で駄目ならもっと生産に有利な基地に工場を新設することに対して抵抗がなく、中国本土はもとよりのこと、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナムにまで生産拠点を拡げている。
その場合も、台湾政府が後ろ楯になっているわけではなく、自分以外に頼るものはないから、利息のかからない自己資本で賄う人が多い。したがってソロバンはしっかりしているが、それでも投資先のカントリー・リスクには勝てない。今回のような通貨不安のさなかでは、現地に進出している企業は進出企業としての被害は一通り受けている。
最近になって、台湾の副総統や行政院長が率先してシンガポールやインドネシアやフィリピンを訪問してそれぞれのトップと会って、北京政府のいちばん嫌がる外交活動を展開しているが、台湾に金融援助の能力と意思があることを知ると、国交断絶後、公式の連絡も途絶えていた韓国からの使者が台北まで飛んできた。
こうした動きを中国は台湾の「金銭外交」と批判しているが、中国としても台湾と統一について交渉に入る時期にきているので、一頃のように公式に抗議したり、声明を出したりすることはなくなった。台湾からそれぞれの国に対する緊急援助について何らかの申し出はあったと思われるが、この際、東南アジアに進出している台湾系の企業に何らかの援助をしようという動きの一環と見たほうが正しいだろう。
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