台湾の通貨が今回の通貨不安で津波ていどの被害はあったが、台風の直撃をくらわなかったのは、一に台湾がドル建ての借金を大量にしていなかったおかげである。しかし、対米貿易をやってドルをしっかり貯め込んだことでは日本に次ぐ立場だから、ドルの大波小波に洗われてバブルも発生したし、その反動によるバブルの崩壊にも直面した。
それでも産茉界が潰滅的な打撃を受けなかったのは、バブルの最中に銀行が無茶苦茶にお金を貸さなかったことと、日本のように資産インフレになったときに政府が遮二無二、地価や株価を抑えにかからなかったからである。
地価と株価は安くないほうが経済の繁栄している証拠である。それを人為的、政策的に抑え込めば、産業界は不況に陥る。中国人はその弊害をよく知っているので、台湾でも香港でも、政府は地価と株価に異常なほどの関心をもち、少し下げがきついとすぐにも挺子入れに乗り出す。おかげで日本のように最悪の状態までは追い込まれないですんでいる。
そうしたしたたかさというか、逆境に強い体質は中国人に特有のものであり、また東南アジアの華僑たちにも備わっている資質である。したがって政府が失策をやらかしても、企業や個人がそれぞれに自衛力を発揮するから、逃げ遅れて波にさらわれて消えてなくなることはあまりない。むしろ嵐のなかに踏みとどまってしぶとく生きる人のほうがずっと多いのが中国人の社会である。台湾、香港、シンガポールの通貨不安のなかにおける姿勢はそうした意味で共通しているところがある。地価や株価の暴落に見舞われたくらいのことでへこたれることはないと思って間違いないだろう。
それに比べると、東南アジアの他の地域は経済的地盤が脆弱なせいもあるが、政府の対応が悪かったり、政治不安が生ずると、さらにピンチが深刻化する可能性がある。
しかし、これらの地域の経済的実権を握っているのはほとんどが華僑であり、日本やアメリカやヨーロッパと提携をして事業を展開しているのも華僑系資本が多いから、一時的に打撃を受けて資金的にやりくりがつかなくなったとしても、輸出向け生産事業の基地としては、通貨の安くなった分だけ有利になっているのだから、パートナーになっている外資側に出資を仰ぐなり、資金援助をしてもらえば、問題の大半は片づいてしまう。したがって東南アジア経済成長の神話は消えてなくなってしまうどころか、ここを起点にして、いちだんと合理化がすすむと見るのが正しいであろう。
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