韓国の場合は、これらの東南アジアの国々と違って外国資本を締め出すやり方は日本に倣った。日本に対しても、その技術は入れてもその資本参加さえ受けつけなかった。これは日本への対抗意識もあろうが、韓国人の国民性とも関係がある。株式市場も完全に開放していないし、銀行や証券会社にも外国資本の参加を厳しく制限している。長く植民地としての屈辱を味わった反動もあって、自国人によって純血の財閥を育てあげて強い国に仕立てあげたいという悲願に支えられて孤立主義を貫き、借入金に大きく依存した経済体制に走ってしまった。
しかもがっしりした基礎構造ができないうちから労働組合の力がアンバランスに強大になり、国際収支が黒字化しないうちから、所得の再分配を最優先させたので、借金コンクリートの経済構造を大きく揺さぶられることになってしまったのである。
製品の値段は安いけれど品質がともなわず、そのうえ膨大な借金を背負っていたのでは、先進国での競争にはとても打ち勝てない。やむをえず東欧・東南アジア・アフリカなどの発展途上国の市場開拓に力を入れてきたが、外貨不足の国々では思うように物が売れない。そこを狙われて東南アジアの通貨不安が伝染すると、たちまち通貨不安の本命みたいになってしまった。
韓国人は勤勉で団結力も強く、機敏さにおいても人後におちないが、借金を減らし、品質改良に力を入れて先進国で売れる商品をつくれということになると、日本と正面衝突をする業種が多いから、かなりの苦戦が予想される。ただ闘争心も激しいが、団結力も強いから、IMFや債権銀行団との交渉を見てもわかるように、頭の回転も行動も速い分、私たちが見ているよりは回復のスピードが速いということも考えられる。
それに比べると、日本の立場ははるかに複雑である。日本はドルを借りて通貨不安におちいった国ではなくて、逆にドルを稼いで不況におちいり、稼いだお金を韓国や東南アジアの国々に貸してひっかかり、不況をさらに増幅させているからである。
どうしてドルを稼いで不況におちいったかというと、バブルの波をかぶったあと、バブルが崩壊するに任せ、デフレの底であえぐようになったからである。バブルが発生したあともバブルを維持する努力をするか、バブルの消えるのを途中でブレーキをかけて止めておけばこんなことにはならなかったのである。
バブルに流されてそのまま消えることを恐れてかなりの企業が海外展開を開始した。日本の銀行も国内だけでは後ろ向きの融資ばかりになってきたので、海外に拠点をつくった日本企業を中心に海外で融資をはじめた。アメリカでの融資はアメリカのお国の事情でかなりの反撃をくらい不首尾に終ったものが多いが、東南アジアや韓国で今回はまたしても通貨不安のあおりを食らっている。
日本企業への融資は、本社の保証もあることだから不良債権化の心配はないだろうし、韓国のように国家保証を取り付けたものもまだ不良債権とはいえないだろう。しかし、十兆円に及ぶだろうと推定されるアジアヘの融資のなかには自由を拘束されてしまったものもそうとうあるだろうから、アジアの通貨不安は日本国内における金融不安を煽るものではあっても、日本に塩を送る動きでないことは確かである。
とりわけ通貨不安が一応おさまったとして、次に起るのは通貨不安によってひき起されたアメリカのアジア関係企業の業積悪化と、通貨安によるアジアからの輸出攻勢だから、アメリカがあまり遠くない将来に株安とデフレに見舞われることはまず避けられない。FRB(連邦準備制度理事会)のグリーンスパンはアジアからもたらされるデフレを景気廷命の要素の一つと楽観しているようだが、今度こそは日本に不況をもたらしたデフレがアメリカに投げ返される番であろう。
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