では皆がお金を使わなくなったら、物が売れなくなり不景気がいつまでも続くかというと、いままでの常識と違うことが起っているからその調整にいささかの時間と犠牲が伴うが、お金が使われなくなるのではなくて、お金の使われ方が違ってくるだけのことである。
したがって人々が喜んでお金を払ってくれる分野で新しい商売がはじまり、逆にお金を払ってもらえない分野は店じまいをしなければならなくなる。売れ筋商品とそうでないものの区別が次第にはっきり出てくるし、また物の売れなくなった分だけ物を売る商売は衰微する。つまり同じ流通のなかにあって、斜陽化するものとそうでないものの区別が出てくるということである。
まず食料品をはじめ、衣料品、日用品などの消耗品は生活に必要なものだから、人間が生きているかぎり繰り返し売れていくものである。ただし、生産のいまの段階では、生産能力が需要をカバーしてあまりあるから、コストダウンとか、技術革新による競争力のある新製品でないかぎり、新規参入の余地はほとんど残されていない。そういった意味では、食料品を中心としたスーパーは最も手堅い業種であり、デパートの食料品売り場も工夫次第ではデパートを支える大きな柱になるだろう。
次にファッション性の高い分野がある。衣料品や靴、ハンドバッグの類いは、実用品でもあるが、これに流行性が加わると、途端にムード商品に変る。流行はハヤリ、スタリのあるもので、実用性のほかにブランドとかデザインという付加価値が加わるから、実用品とは違った動きをする。ムード商品は、ムードとはあまり縁のないスーパーやディスカウントストアではいくら安くてもお客が買ってくれない。高級イメージのあるデパートとか、ホテルのアーケードにある専門店の独壇場である。
しかし生活必需品でないだけに、景気の悪いときは滞貨の山になって売れ残ることがあるから、この数年はファッション・メーカーの受難のシーズンであった。その代り、滞貨の山が姿を消して、ファッションが一新されると、またぞろ新しい需要が喚起されるのがファッション産業である。ファッション産業は夢を売る商売だから、夢見る人がなくならないかぎり途絶えることのないものである。
一方、自動車とかテレビとかクーラーや冷蔵庫のような耐久消費財は、古くなれば自然に新しい代替需要が発生する。しかし、メーカーは機能的に大きな変化がなくとも、新製品のデザインを変えたり、引き出しの位置を右から左に動かして、年々外観の違ったものに変える努力をするから、外観だけ見るとまるで違った商品になってしまっている。それでも節約ムードの支配しているあいだは、消費者がなかなか財布の紐をゆるめようとしないから、暖冬になったり寒い夏になっただけで空調機器が売れずに在庫の山になったりする。
そこヘコストの安い東南アジア製や中国製がダンピングをかけてこようものなら、家電メーカーは思惑がはずれて業績悪化に曝されてしまう。ついには発展途上国で生産された日本メーカーの家電製品が競争しあう時代になって、日本の家電メーカーの業績を左右するのは半導体中心に重点が移ってしまった。
こうなると、日本国内でメーカーがしのぎをけずるのは売れ筋商品の開発に絞られ、定番になってしまった商品は企業の利益を決定するものでなくなってしまった。代替需要を充たす製品に至っては、メーカー間の競争が激化し過剰生産のために安売り競争の対象にされるので、利益が低下し、業績悪化の原因にすらなっている。
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