ただし、それができるためには、暗礁に乗り上げた理由はどこにあるのか、どこの荷を軽くすれば船が浮き上がるのか、力を入れるところを間違えないことが何よりも大切である。たとえば、最近の経済対策を見ていると、傾いた船の重荷がいっせいに銀行業界にのしかかっているので、不良債権の大きさだけが目について、銀行の経営者の責任を問うことと不良債権の整理に一点集中しているが、いくら不良債権の切り捨てをしたり、再建の見込みのない銀行を倒産させても問題の解決にはならない。
不良債権の発生した直接かつ最大の原因は、株安と土地安にしたことだから、株価と地価をなんとか上げる努力をしなければならない。倍とはいわず、せめて五〇パーセントでも値上がりさせることに成功すれば、水に浸ってしまった荷物の半分は助かるのだから、一兆ドルとアメリカから指摘された不良債権はそれだけで半分は助かる勘定になる。
もちろん、株価や地価を上向きにさせるのはそう簡単にできることではない。高値からちょっと下げて、まだそんなに冷え切っていないときならその気になればすぐにも戻せたが、これだけ冷え切ってから大量に薪をくべたところで、ちょっとやそっとでは元へは戻れないだろう。それでも不良債権の発生源が地価と株価の大暴落にある以上、地価と株価の上昇に焦点を合わせて浮揚をはかる必要がある。
ところが、対症療法しか眼中にない当事者たちは原因になっているところを取り除くことは考えずに、銀行の不良債権をどう片づけるかというところにだけ神経を集中している。これだけ症状が悪化したら、思い切った手術をせざるをえないが、もとはといえば、バブルがはじける時期に政府が率先して株価や地価を政策的に押し下げたことから起っている。
銀行マンたちがいい加減なお金の貸し方をしたからではない。政府のやり方に対する見方を誤った意味では、銀行にも責任はあるが、経済界のほとんどの人がしばらくガマンをすれば元へ戻ると考えていた。金利の払えなくなった融資先に迫加融資をして景気の回復を首を長くして待っていたのである。それが待てど暮せど回復どころか、とうとうパンクするところまで追い込まれてしまった。
そうは言っても、銀行が融資を焦げつかせて経営困難に追い込まれているのを解決するのが焦眉の急である以上、銀行の不良債権の整理が優先することに異議をさしはさむ余地はない。なぜ銀行の倒産がそんなに問題になるかというと、銀行を倒産するに任せたら、預金の払い戻しや利払いができなくなって、預金者にまで被害が及び、国全体が大混乱におちいってしまうからである。
一九二九年の大恐慌のときは、金融界の破綻が預金者の手元に及ぶに任せた。そのために経済界が疲弊し、立ち直りに長い時間がかかった。そのころに比べると政府の役割も進歩したし、また銀行という堤防の崩れるのを防ぐだけの実力を国がもつようにもなっている。だから銀行が預金者に支払えなくなった分を国が代って支払えばよいのである。
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