しかし、少なくともそれまでは日本も中国もアメリカの市場をめざして激しい競争をくりひろげることになる。中国の場合にはアパレルの縫製をして大量に日本向けに輸出もしているから、日本の景気回復が遅れて円安が続くと、中国が割を食うことになる。中国から見ると、日本で現に起っていることには不可解なことが多い。
実際、日本でいま起っていることのなかには、従来の経済の常識では考えられないことがいくつもある。たとえば貿易が大幅黒字になれば円高になるのが常識だが、日本では円安傾向が続いている。また円安になれば、日本の金利は上がるはずなのに、日本では金利は下値に貼りついたまま、挺子でも動かない。通貨不安におちいった国はどこも高金利に悩まされているのに、ひとり日本だけが逆の動きになっている。
もちろん後講釈になるが、こうした常識を裏切る現象はまったく説明のできないことではない。為替相場を動かす要因のなかには貿易収支のほかに投機筋の動きがあって、巨額の投機資金が為替相場を左右するようになったからである。
石油ショック以前は国際貿易の決済をする人だけが外貨を買った。だから為替相場は貿易のバランスの動きに左右された。ところが、アメリカがお札を印刷して貿易尻の決済をするようになってから、大量のドルが貿易黒字国の手に渡るようになった。最初のころは産油国が大量にドルを保有するようになったが、やがてそれが日本や西ドイツや台湾などの貿易黒字国に移った。
これらの国々はドルが貯まれば、ドルを準備金にして自国通貨を発行できるから、中央銀行がドルと交換に自国通貨を渡し、ドルはアメリカにもっていって運用する。すると、労せずして運用益を稼げるから、口ではあまり黒字になるのはよくないといいながら、心では黒字大歓迎という仕組みになっている。
そういう仕組みのなかで最もドルをたくさん稼いだのがほかならぬ日本であったから、日本国内は見る見るお札の洪水になって、一大バブルが発生してしまったのである。
バブルが崩壊したあともこの仕組みはそのまま残って今日に至っている。対米黒字が続くと、日本人の手にドルが貯まるが、貯まったドルはアメリカに持って行って運用すればよいし、アメリカとしても借金ができれば払うお金には困らない。ドルが上がろうと下がろうと、払うお金に困らなければ、アメリカの通貨当局も円がどんなレートであろうと大して気にならなくなる。本来なら円が安すぎるぞと文句をいうところが、うんともすんともいわなくなったのは、借金経済がすっかり定着してしまったからといってよいだろう。
こうなると、日本国内で貯めた円を銀行に預けっぱなしにしておいてもハナクソにもならないから、ドルにでも換えてアメリカにもっていこうかという気になる。そのお金が貿易黒字を超えるようになれば、ドルの需要が増えるから黒字でありながらさらにいちだんと円安になる。
日本はそれでも平気かもしれないが、これにはアメリカに当分人民元の切り下げはしないと約束した中国のほうが頭にきて、ついに「これ以上、円安を放任するのなら、われわれにも考えがある」とアメリカにねじこんだ。驚いたのは、日本よりもアメリカのほうである。
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