中国はアメリカとの関係修復を最重要課題としており、そのためにかなりの譲歩もしている。とくに人民元を切り下げないことを約束したために、香港が大きな犠牲を払わされることになった。中国大陸は輸出が鈍化したうえに洪水の影響で八パーセントの成長達成に暗い影が差している。わけても東南アジア向けの輸出は潰滅的な打撃を受けており、私の知っているある上海の機械メーカーの対マレーシア輸出は昨年の実績に比べて十分の一におちてしまった。
このことは東南アジアの工業が、たとえ平価の切り下げをしてもそう簡単には立ち直れないことを示している。同時にまた東南アジアからの華僑による大陸投資が撒退を余儀なくされるところまでおちこんでしまったことをも物語っている。
となると、中国としては、今後、華僑関係では台湾からの投資により多く依存せざるをえないし、純然たる外国資本ではアメリカの進出に期待する立場におかれている。とくに九七年の人民大会で採決された国有企業の株式会社化を推進するためには外資による梃子入れが不可欠である。中国が八パーセントの成長率にこだわるのも、八パーセント程度の成長がなければ、市場経済化によって倒産に瀕した国有企業から放出された千三百五十万人にも及ぶ失業者の吸収ができないと思われているからである。
そのために本年度に入ってから大規模な公共事業を次々と打ち出しているが、そうした全力投球のさなかで輸出を阻害する新しい外的要因が加われば、苛立ちはいっそう先鋭化する。したがって大幅貿易黒字でホクホクの日本だけでなく、借金に苦しむはずのアメリカまでが円安の進行を放置していることは中国にとってとてもガマンのできることではない。
中国はまずアメリカに厳重抗議するとともに、外交部が公式の記者会見の席上で日本の善処を要求した。その剣幕に驚いて、ドルは一日で百四十五円から百三十円台まで戻したが、小渕内閣が誕生して宮澤蔵相が登場すると、またぞろ円安に動きはじめた。宮澤さんについてはバブルの崩壊を導いた張本人であるという認識を多くの人々がもっており、こともあろうに会社をおかしくした人にまた会社の立て直しを依頼するとは、ミスキャストもいいところだという意見が多い。宮澤さんは世界中をうろつきまわっている巨大な投機資金のことが念頭にあるから、政府の力をもってしてもどうにもならないと戦う前から降参してしまっている。宮澤さんのような為替観だとアメリカも日本も円安によって損害を受けないのだから、そのまま放任しておけばよいということになる。
このまま円安がいちだんと進めば、中国の国際競争力はさらに弱体化する。日本と競争関係におかれる業種や輸出先では中国はいっそう不利な戦いを強いられる。とりわけ対日輸出では中国はたいへんなピンチに追い込まれる。今年中は、それでもなんとかもちこたえられるだろうが、一年たって中国の国際収支に悪化が目立つようになれば、人民元の切り下げも視野に入ってくる。そうなると、アジア中の通貨がもう一度、調整を強いられるから、アジア経済の立て直しは大幅に遅れるし、それがアメリカにもはねかえって、アメリカの株が大暴落して、アメリカ中が節約を強いられる可能性がある。そうした状態になることを恐れるからこそ、アメリカは日本が輸入を拡大するか、輸出を控えて経済大国としての役割をはたしてくれることを厳しく要求しているのである。
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