もしこれで一瀉千里(いっしゃせんり)ということになると、通貨不安は一挙に全世界に拡がるから、株安を食い止める手段の一つとしてさしあたり金利の引き下げが行われる。はじめは〇・二五%からスタートした小幅の利下げでも、株安がくりかえされると、株価を維持するために〇・五%あるいはそれ以上になり、不況の拡大と共に、日本と同じように超低金利の方向に向うことが考えられる。
株安は低金利を誘うが、低金利は株安の下支えにはならない。むしろ資金需要が不足するから低金利になるのであって、低金利になっても資金需要が刺激されることは少ない。
いくらか資金需要がふえたとしても、ほとんどが後ろ向きの資金であって、積極的に設備投資をしようかとか、株の下値を買い支えようかとかいった性質のものではない。低金利になれば、どちらかといえばカネの方が株式市場を見限って逃げ支度にかかる。外国から投資先を求めてアメリカに出稼ぎに来ていたカネなら早速にも国元に帰るか、もっと安全で確実な投資先を求めて他に移動する。
だから、ドルが値下がりをして、円やマルクや台湾元などが逆に値上がりすることが起る。すぐにも猛烈なドル安にならないにしても、ドル安の方向に向うことになれば、今度はその方向に行き過ぎになる可能性が出てくる。したがって対米輸出で比較的実力のある日本や台湾やドイツのような国々は、アメリカの不況によって輸出が困難になるだけでなく、ドル安によって輸出産業に赤信号がともるようになる。
では、株安に見舞われたアメリカはどうなるか。仮に株価が半値まで下がったとすると、株式市場で稼いでいた機関投資家も個人投資家も総崩れになる。個人投資家は借り入れといってもタカが知れているから、全財産を失って自宅を売らなければならないくらいのことはあるかもしれないが、機関投資家になるともっと深刻なことになる。
たとえば年金が財産を半分失えば、老齢者への年金の支払いに支障をきたすようになるだろう。日本のような低金利が続けば、金融市場でキャピタル・ゲインを上げることは期待できなくなるし、既発債の値上がりによって一時潤うことはあっても、金融債の利廻りで年金支払いに要するだけの収益を上げることができなくなる。それが長期にわたって続くとなれば、やがて年金は政府に泣きつくよりほかなくなる。
アメリカにある無数のファンドともなると、アジアでもそれなりの痛手は蒙っているが、ロシアとか、中南米に加えてニューヨーク市場での株安に見舞われると、株安が解約を誘うから、解約が更なる株安を促し、株や外債を全部叩き売っても借入金の返済ができなくなる。ファンドが倒産すれば、ファンドに融資している銀行は担保にとっている株や外債を売っ払っても貸した金には満たないから莫大な損害を蒙る。
日本の不良債権のほとんどが土地担保の貸付金であるのに比べると、換金性がある分だけ被害額の算出は容易だが、思い切って早めに処分をした銀行の方は傷が浅くてすむが、次にそれらの金融商品を引き受けた別の業者がまたそのあとの値下がりをかぶるとすれば、株価や外債の値下がりによる損害は金融業界全体に及ぶと見てよいだろう。
日本のように地価が五分の一、十分の一まで下がったのに比べれば、株安による被害は少ないかもしれないが、貸付金の半分しか回収できないようなことが起れば、アメリカでも日本で起ったようなことが起る。
十年前の貯蓄銀行の倒産ではアメリカは思い切って体力の衰えた銀行を倒産させ、業界の再建に力を入れたというが、市中金利の高騰のために住宅ローンの逆ザヤに悩まされて立ち行かなくなった銀行の負債はアメリカ全体から見たらスケールの小さなものであった。
今度のマネーゲームは国をあげての大バクチだから、そうはいかない。石油ショック以降、四半世紀かけて大量に印刷したカネを銀行やファンドに集めてカネでカネを稼ぐ挙に出たのだから、バブルが消えて株価が下がってしまえば、カネもその分、消えてなくなってしまう。
それもアメリカ中の大銀行が貸付金の担保としてとった株や証券が目減りするのだから預金はもとより同業者からの借入金も返済できなくなり、そのまま放置しておくと、日本の銀行で起ったことと全く同じことがアメリカの銀行にも起ることになる。
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