3. 廃業したいが廃業できない
選手交替の時期
貸レコード屋という新商売が繁盛するようになったのは、一言でいえば、レコードの値段が高すぎるからである。一枚二五〇〇円のLPを二日間五〇〇円で貸すと、若い連中がその間に、五本でも一〇本でもテープにコピーしてしまう。テープは一本二〇〇円くらいだから、一〇本とったとして、一本当たりが二五〇円で間に合ってしまう。二本しかとらなかったとしても、四五〇円でLP一枚分のコピーがとれてしまうのである。
一方、貸レコード屋のほうは、卸値でレコードを仕入れているから、三人か四人に貸せばもう元はとれてしまい、あとは貸し出しただけ全部儲けということになる。
こういうことになったのも、もとを正せばテープというものが開発され、しかもそのテープが安い値段で手に入るようになったからである。同じことが本についても可能であり、事実、希覯本については、昔のような写本の代わりにコピーが行われているが、一般の書物にそれが応用されていないのは、いまのところコピーしたほうが高くつくからである。テープの場合も、当然、著作権があって、無断でコピーして売ることは他人の著作権を侵害することになるが、コピーしたものを自分が楽しむことにだけ使用するとなると、話は微妙になる。誰がコピーしたか、いちいち追及することができないし、誰でもただちに他人の著作権を侵害できる立場にあるのだから、テープの発売を禁止する以外に事実上、防ぐ方法はないのである。しかもテープを売ったり、デッキを売ったりしている音響機器メーカーが、レコード会社のオーナーを兼任しているのだから、自分の手で自分の身体を縛るようなことができるわけがない。
とすれば、レコード会社が新しい事態に備えて、自ら変貌する以外に方法がないだろう。私はたまたま十六、七年前に一年間だけ戯れに作詞家をやったことがあり、ビクターとテイチクと東芝でレコードを出したことがあるので、この世界の内幕を少しばかり覗いたことがある。
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