手形不要の商売を
高利貸は因果な商売だというけれど、それは善良な市民から金を巻きあげるから因果なのではなくて、倒産寸前に追い込まれた人々を相手に、こげつく危険をおかさなければならないところが因果なのではないかと思う。
高利貸の庶民版は昔は質屋だったが、今はサラリーマン金融である。新聞をひらくと、サラ金の利息に追われて首が回らなくなり、一家心中をした記事によくぶっつかる。見出しが「サラ金で心中」と書いてあるし、死んだ者がサラ金の犠牲者であるといった調子の文章が多いから、何かというとサラ金業者が槍玉にあげられているが、よく読んでみると、競輪、競艇に夢中になって借金が三〇〇〇万円になったとか、マイホームを買うのにサラ金の高利を借りて首が回らなくなったという非常識な経済オンチばかりである。
こういう経済的な無能力者に金を貸す奴があこぎだというなら、競輪、競艇の開催を許す国や地方団体のほうがもっと悪いし、家を建てて経済的無能力者に売る奴も悪いということになる。
私の知っている人で、小規模のサラ金を開業している人があるが、金を借りに来るサラリーマンのなかには、踏み倒し専門の悪質な奴も多いし、借りた金を返す気なんぞさらさらない「金にだらしのない奴」も結構たくさんいるそうである。
大きなスケールのサラ金会社ならこげついた金の処理を担当する部署があるが、小サラ金になると、同じ営業の人がこげつきの回収にも行かなければならない。八王子の先まで出かけて行って、本人が帰ってくるのを公団住宅の階段の陰にかくれて待っている。やっと最終電車で帰ってきた本人が自分のアパートヘ入ろうとするのに追いついて、「お金を払ってください」というと、玄関口で言い争いになり、こちらがひるむすきにアパートの中に逃げ込んで、中からガチリと錠をおろしてしまう。いくらベルを鳴らしても、知らぬ顔の半兵衛をきめてしまい、ひどいのになるとこれ見よがしにテレビの音をわざと大きくする。
「ああいうときは、公団住宅の扉が鉄でできているのがうらめしくなりますよ」
と嘆くのをきかされて、これじゃ、いったいどちらがあこぎなんだろうかと、考えさせられたことがある。また、ある一流広告会社の社員に金を貸して、なかなか返してもらえないサラ金があった。担当したのが入社したばかりの新米だったので、社長が新米に必ず回収して来いと命じた。
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