6. 手形の魔術にだまされるな
連鎖倒産のおそろしさ
商売をやる人は誰でも、はじめから豊富な運転資金に恵まれているわけではない。親譲りの財産を持っている人ならいざ知らず、自分で創業する人は、サラリーマンをしていたときに貯めたお金だとか、身内や友人からかき集めてきたお金で仕事をはじめるから、運転資金ははじめからないか、あってもたちまち底をついてしまうものである。
では、そういう状態では商売をやって行けないかといえば、もちろん、そんなことはない。
お金のない人は、お金がなくてもやれる商売の仕方を工夫する。たとえば、機械や設備を買う資金がなければ月賦で売ってくれるメーカーもあるし、またリースで貸してくれる商売をしているところもある。材料や部品を仕入れる資金がなければ、代金の支払いを三カ月先とか四カ月先の手形で承知してもらうこともできる。
極端ないい方をすれば、自分のお金は一文も使わずに、製品を売って代金を回収してから材料費の支払いをすることさえできるのである。
もちろんそのためには、仕入先に信用があることが大前提になる。お金がなくても人柄を見込まれて貸してもらえることもあるし、現金は要らないが担保になるものをいただきたいと要求され、不動産を担保にとられたり、保証人を立てさせられたりすることもある。どちらにしても、支払いを一定期間、猶予してもらえるから、そのあいだに代金の回収ができれば、少ない資金で大きな商売をすることが可能になる。
その代わり、約束手形はいっぺん振り出すと、「待ってくれ」というわけには行かない。実際には、期日前に出かけて行って、「どうしても資金繰りができないから、あとしばらく待っていただきたい」といって、手形の差替えをたのむことはないことではない。しかし、そういうことを一回でもやると、金に苦しんでいることが相手にわかってしまうから、警戒されて取引きをストップされてしまう。だからどんな無理をしても、あるいは、銀行から借りてでも、手形はきちんと期日におとすのが常識になっている。
しかし、「あてとふんどしは向こうからはずれる」というように、あてにしていた商売が不成立に終わったり、支払ってもらえるはずのお金の入金が遅れたりする。あるいは、とり立てに出していた手形が不渡りになって、払える予定の金が俄に払えなくなったりする。そういうときでも、自分の払い出した手形の期日が来ると、「待ったなし」だから、夜、枕を高くして寝られるためには、手形を発行しないにこしたことはない。現に私自身もそう思っているし、それを実行している。
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