ただし、商売は自分一人でやっているわけではないし、取引きには相手もあることだから、自分が是非そうしたいと思っても、相手がそうさせてくれるとは限らない。こちらが手形を切らないですべて現金で払うとしても、こちらが商品を納めている相手が手形でしか払えないといえば、それを受け取るよりほかないだろう。
電車賃だとか、飲食代とか、光熱費とか、主としてサービスに属するものは原則として現金払いだから、世の中には「現金商売」という分野の商売がある。しかしそれ以外の分野では、ほとんど必ずといってよいほど、手形が罷り通る。支払いの全部が全部、手形というのもあるが、半分現金の半分手形というのもある。
業界全体がそういう商習慣になっているところへ割り込んで、「現金でないと取引きしない」といってもなかなか通用しない。したがって、自分だけ手形は発行しないと頑に抵抗してみても、そのためにはもらった手形の期日が来るまでジッと我慢して、自分のほうは現金でドシドシ支払いをしなければならないから、三、四カ月分の運転資金を持っていなければならない。
現実にそういう余裕を持って資金繰りをやっている会社が、ないわけではない。しかし、そういう企業は折紙つきの優良企業で、たいていの企業はまず一〇社のうち九社までは、もらってきた金が手形なら、それがおちる期間を見はからって支払いのほうも同じように手形で支払っている。多少の期間の余裕を見て、受取手形と支払手形の金額が見合っておれば、「まあまあ、正常に運営されている」と人は見る。
受取手形の相手の内容にもよるが、相手が一流会社であり、支払いに不安がなければ、もとより問題はない。相手が何百という小売業者に分散していて、一社からの受取手形が全体の一〇〇分の一以下などという場合は、ほとんど心配はない。また、自分の会社そのものに財力があって、手形の割引を銀行に頼んでいるが、いざというときは手形の買戻しができるという場合も当然、不安はない。
ところが取引きというものは、必ず優劣の差や大小の差が出て、売上げの二〇%以上を占めるような有力取引先ができてくるものである。そういう取引先の倒産がある日突然、新聞に報じられたりすると、たちまち連鎖反応を起こして、こちらも倒産に追い込まれるようなことが起きる。低成長下で、かねてから利益の薄い商売をやっているところでは、この不安はしばしば現実になって現われることが多いのである。
←前ページへ 次ページへ→

目次へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ