既成業種を食って伸びる新商法
では斜陽化という尺度以外に、何かもっとよい物差しが考えられないだろうか。私は短い間に急速に成長した企業を、この二十年来ずっと観察してきたが、それらの企業の中で陣地取りのもっとも容易な業種は、ほとんどが古い在来の南売の地盤を食い、それにとって代わる優位性をもったものばかりであった。
たとえば、スーパーは昭和三十年代になってから生まれたもので、日本におけるその歴史はせいぜい二十五年しかない。わずか二十五年間で三〇坪の小さな安売り屋がナショナル・チェーンになり、一社で一兆円企業にまでのしあがった。その急成長のヒミツはどこにあるかといえば、スーパー自身が大型化し、質的変化をすることによって、商店街の中の小売屋を食うようになったからである。つまり小売屋を食い、それを栄養分として巨大小売商に成長したのである。
成長産業の中には技術革新がもたらしたまったく新しい商売、たとえば電波産業とか、音響産業とか、プラスチック産業とか、電子産業とかいったものがある。新しい商品の開発が新しい需要の開拓につながるという、旧来の経済理論をひっくり返すような業種も中にはあるが、そういう新商品でさえも普及して行く過程で、必ずのように既成業界の死活につながる大きな影響をあたえている。たとえば、乗合馬車は駕籠屋を食ったが、バスが出現して今度は乗合馬車を食って大きくなった。映画館は芝居小屋を食ったが、放送局は映画館を食って大産業になった。
こうした目で見ると、古い商売にかわる新しいスタイルの商売が現われると、新しい商売は古い商売を食って大きくなり、古い商売はいつの間にか姿を消してしまう。たとえば、東京に商用で出かけてくる人のための安くて機能的なホテルをたまたま私が建てて、ビジネスホテルと名づけたところ、これがあっという間に全国にひろがった。その理由は、駅の近くの横町を入ったところにある一泊二食つきの旅人宿が人手不足で成り立たなくなり、ビジネスホテルがそれにとって代わったからである。またリース・マンションといって六帖か四帖半にユニット・バスのついた超小型マンションが流行しているが、これは私たちが大学生の頃に泊まっていた下宿もしくはアパートの現代版と考えればよいだろう。
さらに、最近どこでもやたらに看板が目につくサラリーマン金融は、戦前あった質屋にとって代わったものである。ほんの少し前までは、電信柱という電信柱に質屋の広告が出ていた。
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