土地さえ買っておけば
私は、商売が悪くなってニッチもサッチも行かなくなるときは、その人の「運勢」が下降線を辿っているときだと思う。科学万能の時代にいまさら「運勢」を持ち出すのもおかしいが、それ以外のコトバで上手に説明のできない生活のリズムがあるのだから、やはり「運勢」というコトバが一番わかりやすいのではあるまいか。
そういう運勢の悪いときは、実は何をやってもうまく行かないものである。うまく行かないからますます焦るのだが、焦ってもうまく行かないのは同じだから、むしろこういうときは何もしないでジッとしているべきであろう。何もしないといっても、本当に何もしないのではなくて、いままでやってきたことをふりかえって、なぜ自分はうまく行かなかったのか、じっくり反省する時期なのである。
株でいうと、「弱気」の支配する時期である。相撲でいうと、「人の相撲が上手に見える」時期である。破竹の勢いで番付の上位にのぼってきた関取でも、必ずどこかで壁にぶっつかってダンゴが続く。そうすると今までの自信がくずれて、どうして自分が負けるのだろうか、うまくやったつもりでどうして相手がそのまたうわてを行くのであろうか、と他人の相撲の上手なところばかりが目につく。こういうときはいくら土俵にあがっても勝星にはつながらない。負け続ける覚悟で土俵に立つ以外に方法がないから、恢復をはかるより最悪の状態に備えるほうがより現実的なのである。
たとえば、中古車の業者の説明によれば、自動車ブームの上昇期には一台、中古車を売れば三〇万円、四〇万円とお金の儲かった時代があった。だから図にのってドンドン事業を拡張したが、自動車を仕入れることに資金をとられて、土地を買ったり不動産に手を出す余裕がなかった。いまふりかえってみるとあのお金の儲かっていた時期に自動車の展示場にする土地を買っておけば、こんなことにはならないですんだのに、と後悔されてならないという。
私はたまたま中古車のオークションを商売にしている会社に頼まれて講演をしたこともあり、またその業界の実態について少しばかり知識を持っている。私のような第三者から見ると、中古車というショウバイは、あらゆるショウバイの中でももっとも難しいショウバイに属する。なぜかというと、中古車は不動産と違って長く持っておれば持っておるだけ値下がりする商品であり、目がさめるたびに財産が減るから、機敏に対応しなければとてもつとまらない性質のショウバイだからである。
もっとも、ファッション産業だって、売れ残った商品は二束三文になってしまうから、ほぼ同じ欠点を持っている。したがって、ファッション産業で財をなした人は、いずれも思いきりのよい人たちであり、いざとなったら損を覚悟で見切りをする。そうした嗅覚を身につけ、迅速な対策に慣れるという意味では、中古車もファッションも共通の長所を持っているといってよいだろう。しかし、それは財務上の欠陥から生じた長所であるから、企業としては財務上の欠陥をカバーするような補強策を講じなければならない。
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