16. 次の不足商品は「知恵」である
時代遅れは選手交替でカバー
商売がうまく行かなくなるのは、一口でいえば、「能力がない」ということに尽きるが、具体的にいうと、「時代の変化について行けなくなった結果だ」ということもできる。
同じ人間が固定観念にしばられて、あっという間に時代遅れになるというのももちろんあるが、同じ会社の中で次に事業を継いだ人に時代適応力がなくて、事業そのものを駄目にしてしまう場合もある。同じ人間がピンチにおちいる場合は、少なくともある時期に事業を隆盛に導いた過去の実績があるから、何かうまく行かなくなる別の原因が生じているとしても、その他の点では、たとえば資金の運用とか販売網についてはちゃんとしていることが多い。したがって斜陽化は避けられないにしても、いっぺんに倒産してしまうようなことはまずない。ところが、二代目が継いでから急速に業績が悪化したということになると、これは明らかにボンクラがあとを継いだ結果だから、いかんともしがたい。
最近の倒産を見ていると、かつての山陽特殊鋼とか興人、永大産業のような大型倒産はなくなったが、負債総額一〇〇億円から三〇〇億円までくらいの中堅どころが多くなった。創業社長はすでに世になく、二代目が後を継いでヘコヘコ頭を下げる番頭に囲まれながら、放漫経営に明け暮れていたりする。こういう場合は、「その任に非らざる者」がその椅子に坐っているのだから、会杜そのものが消えてなくなるか、ご本人が排除されて片がつくかのどちらかであろう。後継者の育成が如何に難しいか、もしどうしても見込みのない場合は、息子に跡目を継がせることを断念することが如何に大切か、改めて思い知らされるのである。
駄目な二代目ではまったくどうにもならないが、創業者社長の頭が古くなって時代の変化について行けなくなっただけというのなら、まだいくらか挽回の方法がある。一人の人間の頭脳の働きには限界があって、あるところまでくると、どうしても時代とのズレが激しくなってくる。そうした場合、ズレの生じたことを認識するかどうかが問題になる。
たとえば、私の年代の人たちは戦中戦後を通じてそれぞれに苦労をしてきたので、息子に自動車を買ってくれとせがまれたとき、反射的に拒否反応を示す。買ってあげるお金がないわけではないが、学生の分際で遊ぶために自動車を乗り回すなんてとんでもない、という否定的な感情が先に立つのである。ところが息子の周囲を見ていると、友達もそのまた友達もマイカーを乗り回している。親たちの職業や社会的地位から見て、こちらより金まわりがよいとはとうてい思えない。そういう家庭でも息子に車を買いあたえるような、甘い子供の育て方をしているのである。
「一体、こんなことでちゃんとした息子が育つのだろうか。苦労をさせないで、子供が立派な人間に育つのだろうか」
と首をかしげる親がいたとしても、決してあやしむに足りないだろう。
しかし、客観的に冷静に考えてみると、こうした考え方自身がすでに時代遅れなのである。
苦労をして今日を築いた親たちは、苦労が人間形成に役立つと体験的に信じ込んでいる。だから戸塚ヨットスクールの例を見てもわかるように、子供に苦労させるためにお金を払う。苦労するにもお金の要るヘンテコな世の中になっているのである。
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