ロボット産業と失業問題
廃業は、過去の惰性があるから思いきりがよくないとできないが、新規開業は何もないところに新しく絵を描くようなものだから、つい安易にスタートする。とりわけ手金の範囲内でできる仕事とか、現に誰かがやっていて繁盛している商売のマネをするときなどは、たいした思慮もなしに発車をしてしまう。
人間は年をとると、過去においてかなりのスケールで事業に成功した人でも、自分の事業自身に対して、「もうこれでほぼ伸びがとまったなあ」と限界を感ずるようになる。今までの事業は何とか維持して行けるとしても、次にやる仕事や息子にやらせる仕事は、これから発展しそうな新しい仕事に変えるべきだと思うようになる。しかし、いざ新しい仕事に乗り出してみると、あちこちにおとし穴があって、思うように行かないことが多い。
たとえば、最近、一番話題をさらっている事業の中に、ロボット産業というのがある。コスト・インフレとの闘いの中で、もっとも大きなウエートを占めているのは、石油と人件費である。このうち石油は省エネという一連の産業を誘発したが、石油の値段が横這いないし下降気味になったのと、省エネ投資が一巡したのとで、かつての勢いはなくなってしまった。省力のほうは一時、労賃の安い地域への企業進出を促したが、ロボット化が技術的に可能になってくると、工場の自動化が急速に進むようになった。おかげで無人化工場ができたり、工場内における生産過程の自動化が起こり、そういう機器や設備をつくるロボット・メーカーがいっせいに旗揚げをした。その人気に乗って、ファナックのように史上最高の株価をつけた企業も出現したし、また川崎重工や安川電機のように、ロボット産業に参画していることが株価を押し上げる要因になった企業もある。
しかし、自動化することによって排除される労働力は多いけれども、ロボット産業そのものはせいぜい年間、一〇〇〇億円程度の分野にすぎないから、鳴り物入りで騒ぐほどの成長は期待できない。まして年間わずか一〇〇〇億円の産業分野に二百何十社が雪崩れ込むとなれば、実際は見るべき業績をあげられる企業は十指を出ないことになる公算が大きい。だからロボット産業は次の成長産業であるかもしれないが、必ずしも国民的スケールの成長産業ではないのである。
しかし、スケールとしてはたいしたことはないとしても、ロボットの採用によって生産過程で不要になる人間の数は多い。前にも述べたが、さしあたり日本の国だけでも一二〇〇万人の工場労働者が不要になるという。
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