もし本当にその通りだとしたら、ロボット産業よりもメーカー全体が大きな影響を受けることになる。たとえば、ロボットが採用されるにつれて失業問題がきびしくなる。とくにアメリカのように、ロボットで代替される単純作業の分野は黒人とかメキシカンの労働者が多いから、ロボット問題即人種問題という可能もひめている。したがって、アメリカでは工場の自動化に対する抵抗が予想外に強く、日本のような急速な展開はあまり見込みがないように思える。
ところが日本では、ロボットの採用に反対する労働組合はめったに見られない。社長から末端の労働者に至るまで真剣にコストダウンに取り組まなければ、国際競争に打ち勝って行けないという共通の危機意識を日本人は持っている。かりにロボットの採用によって自分の仕事がなくなる立場にいる労働者でも、「社長がこのまま自分をお払い箱にするわけがない。必ず配置転換を考えてくれるだろう」と信じているのである。
つまり日本のように、情緒的な経営が行なわれている国では、ソロバンずくの国より生産の合理化がスムーズに進捗する。そのために企業内失業が起こっても、それがただちに解雇につながらず、企業内で解決しようという動きになるから、今後、多角経営が一つのハヤリになるだろう。
もう一つは、今まで外に出していた仕事をなるべく自社内の失業対策に役立てようと心がけるようになるから、下請けの排除もしくは再編成につながり、大きな会社の系列下になり、下請企業の整理、廃業につながって行くだろう。
下請けを業としていた中堅企業や零細企業にしてみれば、何十年も飯のタネにしてきた仕事が減って給料を払うこともできなくなるから、廃業か転業の瀬戸際に立たされてしまう。ロボットの採用がただちに採用した企業の人員整理に直結するわけではないが、めぐりめぐって産業界全体の改廃につながり、採算に乗らなくなった企業から順に姿を消して行くことになる。
たまたまその立場におかれた人にとっては、たいへんな出来事であるが、同じ現象が新しい情勢を生み、新しい商売を可能にするのである。
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