第206回
邱永漢学校に卒業はありません

日本の社長にあたる地位を中国では
総経理(ツオン・チン・リイ)と呼び、
会長にあたるのを董事長(トン・スー・チョン)と呼びます。
この呼び方は中国大陸も香港も台湾も変わりはありません。
しかし、組織の違いから来る権限や地位には
かなりの違いがあります。
日本の会社の実権はほとんど社長にあり、
会長は社長を退任した人が押し上がって
シンボリックな形でとどまっているもので、
冠婚葬祭や記念行事の長などとしての役割をはたします。
なかには実権のある代表取締役としてとどまり、
未練がましく院政を布く人もありますが、
まあ、それは例外の方でしょう。

それに比べると、中国式の総経理は
実務の最高責任者ですが、
総経理は董事会(役員会)の決定に基づいて行動することを
義務づけられていますので、
役員会の代表である董事長に全権があります。
従って総経理が董事(取締役)を兼任するのが普通ですが、
株主権を代表する董事でなくても
(つまり一株も会社の株を持っていなくとも)
総経理になることはできます。

私は多くの会社の董事長をつとめていますので、
中国式に「董事長」と呼ばれることがしばしばありますが、
私の会社の総経理をはじめ、
私と親しくつきあっている人たちは大抵、
私のことを「邱センセイ」と日本流の呼び方をします。
中国語で「先生」とは「サン」のことですから、
露天商人でもタクシーの運転手でも先生ですが、
中国の人も日本語の「先生」が
中国の「老師」にあたることを知っています。
私を「センセイ」と呼ぶのは
日本で私のような物書きが呼ばれる呼称を
そのまま受け入れているのです。

私ももうかなりの年ですから、
先に生まれていることはまぎれもない事実だし、
「先生と言われるほどのバカでなし」
という年齢もすぎてしまいました。
だからセンセイと呼ばれることに
抵抗はなくなってしまいましたが、
事業も学校と同じように勉強すべきものだというのが
私と私の周囲の一致した意見です。
当然のことですが、邱永漢学校に
中退はあっても卒業はないのです。


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