第230回
頭が手足に使われることはありません

企業の日本脱出が本格化すると、
国内の空洞化が起るのではないかと心配する人があります。
でもそういうことは起らないのです。
空気が移動しても真空化が起らないように、
工場の移動したあとは
必ず別の仕事がそのスキマを埋めてしまうものだからです。

たとえば、この30年間に、日本の企業で
台湾に生産工場をつくったところがたくさんありますが、
本社がつぶれたという話はきいたことがありません。
安い製品が海外でできるようになれば、
同じ商品を国内の工場でつくることを
やめた例はありますが、
その分、もっと高品質のものをつくるか、
日本で売れる別の商品に切り換えるか、
でなければ外国で大量につくる製品の機械設備を
つくるようになっています。
余計な心配は要らないんですね。

では国内で物をつくらなくなったら、
企画部とか研究部もついでに海外に移してしまえばいい、
その方が試作にも便利だからという考え方を
する人もあります。
新しい着想や改良が現場から生まれることも
ままあるからです。

それに対して船井電機の船井哲良社長は
異議を唱えています。
船井電機は本社に400人あまりの人員を残し、
生産基地は広東省東莞市に移して、
そこで1万人以上の人が働いています。
だからと言って、
最先端を行く商品の計画まで現地に動かすと、
時代に追いついて行けなくなるという
危機感を持っています。
商品計画が正しくなければ、
いくら製品のコストが安くなっても
何の役にも立たないんですね。

これは実際に仕事をやって見るとすぐにわかることです。
多国籍にわたって仕事をやるようになればなるほど、
企画本部や研究所を生産現場に移すことには
ならないようです。
生産工程の改善くらいは現場でできても、
売れる商品は何かという発想は
工場の中からは出て来ないのです。
頭が手足に命令することはできても、
手足が頭の考え方を変えることにはならないんですね。
本社まで海外に大移動という例が少ないのには
それなりの理由があるのです。


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