第387回
シロウトの株式予想を褒められて

生前、私が親しくしていただいた人に
ロケットの糸川英夫先生と、
名プロデューサーの小谷正一さんがおります。
お2人とも私より12才年上で、
私が60才に達した時はお2人とも72才でした。
年の違いだけはこちらが1つ年をとると
向こうも1つ年をとるので、
いつまでも追いつきませんが、
12才、ひとまわりの違いはかなりの違いです。
でもお2人ともとても元気でしたから、
自分があの年になるまでには
まだまだ時間がかかるなあと思ったことがあります。
それがあッという間に72才に近づいて、
追い越してしまったのですから、
文字通り「歳月は人を待たず」です。

若い人はわからないと思いますが、
糸川先生は戦争中にゼロ戦と呼ばれる
すぐれた戦闘機の設計のチームの一員で、
戦後は東大教授として教鞭をとるかたわら、
糸川宇宙研究室をつくって、
いわゆるペンシル・ロケットという
小型ロケットを打ち上げることに
心血を注いでおりました。

その後、東大教授をやめて突然、
社会経済に興味を持つようになり、
「逆転の発想」という超ベストセラーズを出して
一躍有名になりました。

その本の中に私のことが出て来たことがきっかけになって
親しくなったのですが、
ちょうどニクソン・ショックの後の
株の大暴落に遭遇した時、
たまたま日本経済新聞が
1月3日の恒例の年間見透しのアンケートを
私のところに送ってきました。
日本国中が弱気になっているさなかでしたが、
私はダウが3000円以上になる予想を出しました。
フタをあけて見ると、
ほとんどの経済専門家や有名社長たちは
1800円とか、2000円とか、
うんと低い数字を出しているのに
私と確かもう1人だけが3000円台でした。
これは下手をすると恥をかくぞと頭をかく思いでしたが、
何と私の方があたってしまったのです。
年の初めの新聞を引出しにしまい込んで、
年末に目を通した糸川先生は
「経済のことなら邱永漢さんにきけ」
と書いたのです。
シロウト同志の仲間ぼめみたいなものですけれどね。


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2001年4月1日(日)

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