第533回
少し先を走っている人の目が必要です

外国で仕事をするのなら、
原則としてその国の青年を採用して訓練をし、
将来、幹部になってもらうべきだと
私は長く信じてきました。
いまもその考え方を捨てたわけではありませんが、
実際に仕事をやって見て、
少し手なおしをする必要を感じています。

たとえば、いまから30年前に
台湾に行って仕事をはじめた時、
私は日本人の秘書を連れて行きました。
スタートしたいくつかの企業の責任者は、
合弁企業を除いて、
いずれも現地の人になってもらいましたが、
その監視役兼連絡係として
日本人の秘書を残して帰りました。

どうして日本人を残す必要があったかといいますと、
私の秘書は事業を運営するだけの経験や
人を使う能力には不足していましたが、
日本の空気を吸っているので、
台湾の人たちよりも考え方が進んでいるのです。
大陸から蒋介石について渡来した支配階級の
旧弊も目につくし、
現地のサラリーマンたちの利己主義的な勤務態度にも
馴染めないし、
従ってどうしても批判的になって、
自分ならそんなやり方はしないという気持になるのです。
つまり現地の人たちの欠点が目につく人と
つかない人の違いが出てくるのです。

結果的に言えば、
その場で必要に応じて狩り集めた幹部は
ほとんど時代の変化について行けなくなって
総入れかえになり、
そのあいだに私にしごかれて
少しずつ仕事のやり方を覚えた現地の若者たちが
そのあとをついで実際の経営に従事するようになりました。
ですから現地人に入れかわることに間違いはないのですが、
新しい仕事を移植する場合は、
その土地のいままでのやり方に批判的な目が必要なんです。

そういう目は
その土地の風俗習慣にどっぷり浸かってきた人は
残念ながら持ち合わせていません。
日本人の役割があるのは、
日本人に仕事の経験があるからではなくて、
そういう目を持っているからです。
少し先を走っている人の目なんです。


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2001年8月25日(土)

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