第669回
外国に行く時は手に職を持って


かなり昔のことになりますが、
商社に勤めていた青年から会社を辞めて、
台湾に行って小さな貿易会社をやりたいけれど、
どうしたらいいでしょうかと
相談を受けたことがありました。
「何を扱うかについてあてでもあるのですか」ときくと、
「いや、別にありません」と言う。
「貿易会社はだんだん巨大化する傾向にあって、
 中小は特定のメーカーと特別のコネがあって、
 その会社の原料の仕入れを任されているか、
 もしくはその製品の販売を一手に任されているかの
 どちらかでないと成り立ちません。
 もしそのどちらとも関係がないと、
 一生懸命奔走してやっと商談が成り立ったとしても、
 次回からはねのけられて、
 仕事がなくなってしまいますよ」
と私は否定的な回答をしました。

本人が浮かぬ顔をするので、
「お父さんはどんな仕事をしているのですか」
ときいたら、
「父はサラリーマンですが、
 母は美容師で店を経営しています」
「じゃ、いまからお母さんについて、
 美容の俄か勉強ができますか。
 洗髪からパーマまで一通りのことができたら
 台湾に行って美容院をひらくことは可能でしょう。
 自分に一通りの知識があれば、
 足りない分は美容学校を出て
 経験のある本職に手伝ってもらえばいいのですから」

と私が説明すると、本人はやっと納得して家へ帰りました。
一年あまりたって本人が再び姿を現わし、
「おっしゃる通りに
 一通りのことができるようになりました」
と言うので、私は共同経営者になる人を紹介し、
台北市の一番目立つところに
美容院をひらくところまでこぎつけました。

ちょうど台北はいまの上海や北京のように
庶民の所得が年々上昇するプロセスにあったので、
日本の先端を行く美容師のいる美容院というだけで
大へんな人気を呼びました。
その美容院はいまもハヤっていますが、
経営者はかわってしまいました。
好きでなった美容師でなかったから、
関心が他に移ってしまったのです。

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2002年1月8日(火)

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