第747回
借金をすすめた時代もありました

いまから30何年前、
私は「銀行とつきあう法」という連載を
日本経済新聞に執筆したことがあります。
まだ成長経済の続いていた時代ですから、
うまく銀行とつきあわないと、
商売にも利殖にも成功できない時代でした。

その更に10何年前に
「借金学入門」という本を書いたこともあります。
高度成長に入ると、
年々国民所得がふえるようになりましたが、
物価もそれに負けず値上がりするようになりました。
まだ自分の家も持てない人が絶対多数でしたから、
土地に対する潜在需要は大きかったのですが、
土地を買うお金が貯まるのを待っているうちに、
土地の方がドンドン値上がりをする時代でした。

ですから私はマイホームの欲しい人たちに
「親兄弟からでも、会社からでも、
 借りられるだけのお金を借りて、
 とにかく土地だけは買っておきなさい。
 百万円貯まってから家を建てようと思ったら、
 百万円貯まった頃には
 家が建たずに腹が立ちますよ」
と言って借金をしてマイホームづくりをするように
すすめたのです。

でもその頃は
借金をする習慣が個人にはなかったし、
銀行も個人にはお金を貸してくれませんでした。
仮に貸してくれたとしても、
手堅く生きることを教えられて育った
日本人の大半は借金をおそれて
尻込みをしたことでしょう。
その点、会社の方が一足先に借金することを覚えたので、
一足先に借金の旨みを覚えました。
土地を買ったりビルを建てるお金は貸してくれなくとも、
工場の設備資金や運転資金は貸してくれましたから、
そのお金を使って不動産を手に入れることができました。
一ぺん銀行の窓口を通って会社の金庫に移ると、
どのお金はどこに使われたか
見分ける方法はないのです。
高度成長経済がはじまると、
土地が1番急激に上昇したので、
銀行からお金を借りて土地を買った会社が
先頭を切って大儲けをしました。
それを見て私は
個人にも会社の真似をしなさいとすすめたのです。


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2002年3月27日(水)

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