第800回
あわや新車2台分払わされる所でした

自動車ブームを予想した私は
すぐに無い袖をはたいてトヨタ自動車の株を買いました。
近く増資があるらしいというニュースが流れ、
突然、株が高くなりましたが、
晴海の自動車ショーの
壮絶な人だかりを見た直後だったので、
私は怖がらずに成行きで
確か1株500円ちょっとで2000株買ったのです。
うまく倍に上がったら、
自分の買ったトヨペットの新車は只になるのではないかと
夢をふくらませていたのです。

ところが、増資が発表されると、
株主に1株50円で割り当てるのではなくて、
当時としては珍しい時価発行でした。
株主たちは自分たちの権利を剥奪された気持ちになり、
売りが先行したので、株価は大下がりに下がって、
トヨペットを只にしようという私の魂胆は見事にはずれ、
下手をすると2台分払わされるのではないかと
ヤキモキしました。
確か昭和30年代の半ばに近づく頃のことです。

ちょうどNHKに講演をたのまれて名古屋に赴いたので、
トヨタと日本陶器という
名古屋を代表する大企業の見学に行ったのです。
当時は株をやる人で工場の見学をする人は
ほとんどいませんでした。
株をやる人は兜町に出かけて行って、
相場の成行きや出来高だけを見て、
売るか買うかを決めていたのです。
私はトヨタの常務さんに生産の現場を案内してもらい、
2分間に1台の割合で生産される新車が
つくっただけ売れて行く盛況ぶりを
説明していただきました。

おかげで、自動車産業に対する強気を変更することなく、
しばらく我慢する気になり、
やがてトヨタが新高値を切るようになったので、
只と言うわけには行きませんでしたが、
新車に払った代金の半分くらいは
取り戻した記憶があります。
あの頃の2000株をそのまま持続して
増資の度にそれに応じていたら、
いまはちょっとした財産家になっていたに違いありません。
でも私は自動車ブームをじっと観察しているうちに
考え方を変えてしまったのです。


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2002年5月19日(日)

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