第930回
株の権威なんていい加減なものです

その頃、私は都立大学前というところに住んでいたので、
すぐお隣りの自由ヶ丘駅前の銀行にお金を預けていました。
午前中、原稿を書き、午後はちょっと骨休みをするために
自由ヶ丘に出かけて行き、
時々、お金を預けていた銀行に顔をだして、
支店長さんとお喋りをしていました。

或る時、私はどうも日本の国は
経済の発展する方向に向かって走り出したようで、
これから皆がお金に関心を持つようになるらしい。
お金のことをテーマにしたいと思って、
「株の勉強をしたいのですが、
 どこに行って株を買ったらいいでしょうかね」
ときくと、銀行の支店長さんが、
「株を買うなら、すぐこの裏の郵便局のお向かいに
 小さな証券会社があります。
 そこにうちの親戚がセールスマンをしていますから、
 いますぐそこにいらっしゃい。私が電話をかけておきますから」
と目の前で電話をかけてくれました。

なるほど3時半をすぎた銀行の裏口から出て
言われたところに行くと、証券会社の出張所がありました。
その頃はまだ黒板に白墨で終り値を書いていましたが、
ガラス戸越しにその姿が見えます。
一瞬、私はこのガラス戸を押して入ったものかどうか迷いました。
この戸を押して入ったら、私が銀行に貯金しているお金は
全部なくなってしまうのではないかとためらったのです。
でも次の瞬間、私はもう証券会社に中に入っていました。

それから1年たって、株のカの字もしらなかった私が
週刊朝日を見ると
「兜町に邱銘柄あり、あの人が推奨すると必らずストップ高をする」
と私がその道の大家であるかのような記事が
載るようになっていました。
私が講演に行くと山のような人が集まるということが
実際に起るようになったのです。
1年前は全くのシロウトだった私がその道の権威になったのですから、
権威が如何にインチキなものであるかを
身をもって証明したようなものです。
以来、私は世の権威をあまり認めないようになり、
これもボクのような権威だろうなと思うようになりました。


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2002年9月26日(木)

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