第1056回
ゼイキン報告がウケたわけ

いまからちょうど40年前の昭和39年に
戦後はじまって以来、最大級の不況がありました。
山陽特殊鋼が倒産し、
倒産に瀕した山一證券が日銀特融を受けて
辛うじて倒産を免れるという一幕もありました。

昭和30年の下半期に直木賞を受賞して
小説家としてジャーナリズムに登場した私は
高度経済成長に入った日本経済を見て
ズブのシロウトながら株式市場に挑戦して
あッと言う間に「株の神様」と
冗談半分にもてはやされる身になりましたが、
経済界と浅からぬかかわりを持つようになったので、
人々がお金のやりくりに苦労するようになったのを
肌で感ずるようになりました。

それまでは税金のこともよくわからなかったし、
税金で苦労する立場にもありませんでした。
ところが、小さな商売に手を出したり、
不動産を買ったりするようになると、
いやでも税務署とかかわりがあるようになります。
周囲で商売をしている人たちと話をしていると、
誰もが税金に対してかなりの不満を持っていることが
わかってきました。

ちょうど年が明けたところで、
日本経済新聞から連載を頼まれたので、
私は思い切って税金のことを取り上げたいと言ったら、
担当の部長さんがとびあがるほど驚いて、
「いくらQセンセイでも、
あんな砂をかむような面白くないテーマをとりあげて
何百万人の読者をあきさせないことはできないでしょう」
と難色を示しました。

でも私は「いま一番多くの人が
関心を持っているのは税金です」と説得して
「Qゼイキン報告」と題して
夕刊で一冊の本になるまで連載をさせてもらいました。
連載中もかなり反響がありましたが、
単行本にして出版すると、
たちまちペスト・セラーズの仲間入りをしました。
当時の出版部長さんの説明によると、
世の中にはあわて者が結構たくさんいて、
当時評判だった「キンゼイ報告」と
間違えて買ってくれたからだそうです。
眞偽のほどは別としてシロウトの書いた税金が
ウケる理由があったのです。


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2003年1月30日(木)

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