第1062回
借金が相続の後に立ったことも

私が「Qゼイキン報告」を書くために、
日本の税制を研究していた頃、
とても疑問に思っていたことがいくつかありました。
その中の一つに遺産税が70%にも及ぶ重税なのに
どうして日本の大金持ちは自分の子供に
後を継がせることができるのだろうかということでした。

最高税率が70%に及べば、
大金持ちの遺産に対する税率は
最高税率を適用されるにきまってます。
もし続けて相続人が死ぬようなことが起れば、
100のうち70%とられて30%しか残さず、
それに更に70%課税されたら、
9%しか残さない勘定になります。
金持ちは三代続かない税制だと言われたのはそのためです。

ところが、現実に日本で起っているのを見ると、
東急の五島慶太が死んでも、西武の堤康次郎が死んでも、
子供さんたちがちゃんと後を継ぎ、財閥のトップに立っています。
これはどうしてだろう、
どこに秘密があるのだろうと調べて見ると、
税制にスキマがあることがわかりました。
高度成長期は毎年のように地価が上がっていましたが、
銀行が時価で地価を評価するのに対して、
税務署は政府が決めた路線価格で
相続税を算出します。
たとえば時価1億円の土地に対する税務署の評価は
大雑把に言って4千万円です。

従って1億円の土地を買うに当って
自己資本を3千万円用意して7千万円を銀行から借りれば、
税務署の評価は4千万円ですから、
計算上3千万円のマイナス資産を持っていることになります。
この土地が10億円に値上がりした時、
追加融資を申請して7億円の借金をすれば、
実質は3億円浮いているのに、
税務上は3億円の赤字になります。
追加融資で借りた6億3千万円で
また土地を買って同じことをくりかえせば、
他にかなりの資産を持っていてもプラス、マイナスで
僅かな資産になってしまうのです。
このカラクリがわかっただけでも、税制の勉強をしたのは、
私にとってとても役に立ちました。


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2003年2月5日(水)

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