第1335回
失業か、それとも賃下げに甘んずるか

いまは一言でいうと、失業の時代です。
9年前に「建て直しの原則」という本を書いた時、
「賃下げも射程のうち」という一文を
書いたことがあります。
読者のうちには私が何を言っているのか、
さっぱりわからないという人も
あったのではないかと思います。

長く人手不足の時代が続いたのと、
社内の一致団結を最重要視する経営に慣れてきた日本では、
リストラのために他の経費はカットしても、
賃金に手をつけるのは最後の手段と考えるのが常識でした。
私もそんなこと、知らなかったわけではありません。
いまにそんなことを言ってはおられない時代がくると
確信していたのです。

失業の時代は一足先にヨーロッパを訪れました。
ドイツでもフランスでも、
ヨーロッパの先進国は新しい職務がふえないのに、
平均寿命は長くなる一方なので、
求人と求職のバランスが大きく崩れ、
二桁台の失業が定着してしまいました。
それに比べると、遅れて工業化のはじまった日本では
まだ飽和点に達していないために、
職場の配置換えをすれば
過剰労働力を生かすことができる
という楽観論が支配的でした。

でも私は生産力が
需要をオーバーするようになることと、
グローバル化によって付加価値は
低賃金の国に移ることが
目睫に迫っていると見ていたので、
企業が採算の悪化に耐えられなくなって、
不本意ながら従業員の解雇か、
賃金のカットを迫られる時が
必ず来ると思ったのです。

日本の企業は賃金のカットよりも、
人員の整理を優先させました。
失業保険もあることだし、
所定の退職金を払えば、
辞めてくれる人もあるので、
そちらを先に実行に移しましたが、
それでも間に合わないところまで追いつめられれば、
次は賃下げに踏み切らざるを得なくなります。
失業するか、それとも賃下げに甘んずるか、
二者択一を迫られているのです。
あなたならどちらを選びますか。


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