第1427回
大型デフレは今度がはじめてです

農業社会と工業社会とでは、
生産や流通やサービスを支配するルールが違います。
先ず農業社会は(水産業も含めて)
土地の広さ、位置、肥沃度、
それから天候に大きく左右されます。
土地がなければ、耕作はできませんし、
いくら努力しても悪天候には勝てません。
何年に一度か、大飢饉に襲われると、
お金に困って娘を売る
という悲劇に見舞われたりしました。

では好天気に恵れて豊作になったら
金まわりがよくなるかというと、
作物ができすぎて大暴落をするので
いわゆる豊作貧乏に見舞われて、
穀物や子豚を焼いて捨てるという
ひどい目にあわされました。
何年かに一度は必らずのように
そういうピンチにおちいり、
その上、疫病や戦争に襲われたので、
経済は成長するどころか、
一定のスケールの中で
同じことをくりかえすのが関の山でした。
人類の歴史の中で一番長く続いたのは
こうした農業社会だったのです。

もちろん、農業社会と言っても、
耕作に必要な農機具や武器や生活用品や
手工芸品のような家工業は、
それらを商う商業と共に古くから存在していました。
そうした中から紡織機械や
蒸汽機関がヨーロッパで発明され、
その一方で交通機関の発達によって
人の往来が地球上に及ぶようになると、
耕作可能な新しい土地が発見されただけでなく、
人が機械器具を使って工業製品をつくるようになって
人類の営みは農業から工業へと移動するようになりました。
産業のひらけた順序に、
工業国家が出現するようになったのです。

農業から工業社会に移ると、
富の内容は大きく変わり、
天候に大きく左右されていた景気は
工業製品のビジネス・サイクルによって
左右されるようになりました。
そんなに昔のことではありません。
1929年に起った大恐慌のもたらした過剰生産は
まだ農作物が中心であり、
自動車はありましたが、
家電製品やコンピュータはまだなかったのです。
お気づきだと思いますが
工業社会になってからの大型デフレは
今回がはじめてなのです。


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