中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2232回
気がついたら住宅の高層化と都心部への回帰

いま日本に住んでいて、一番大切なことの一つは
「自分たちは成熟社会に住んでいるのだ」
という認識ではないかと思います。
成熟社会と成長社会は違います。
体格が一年ごとに成長する人間と
もう大人の体格になった人間では
着る服も違えば、食慾も違います。
それと同じように、
体格がほぼきまってしまった成熟社会が
また或る日、突然、成長経済に戻ると考えるのは
子供じみています。

成熟社会とは泡のはじけたビールみたいなもので
味も素っ氣もないと考えがちですが、
日本人にとっては新しく経験する世相であり、
それなりに変化もあれば発展もあります。
ニートと呼ばれるだらしのない怠け者が大量発生して
社会のお荷物になるのも成熟社会なら、
「安物買いの銭失い」と悟って
スーパーやコンビニにばかり入り浸るのをやめて、
デパートの食品売場に戻ってきたり、
「個性のある小さな店」が大量に発生して、
そこに人が集まるようになるのも成熟社会の新しい光景です。
また満たされない欲望に渇きを覚えて、
銀座や六本木や表参道に新しくできたブランド商品の店に
つい足を運ぶのも、最低、飢死する心配のない
熟練社会になったればこそです。
雨後の筍のように次々と高層建築こそ建たないけれども、
気がついて見たら、隣もまたその隣りも家を建てなおしたり、
近くにあったコンビニがいつの間にか
二軒から五軒にふえたということも起っています。

また都心にありながら建蔽率の制限で平屋だったところが
いつの間にか高層建築になって
郊外へ郊外へと拡散していた人口が
再び都心に戻るようなことも現に起っています。
ではそうなったら、
客に見離されてシャッターをおろした
地方都市の駅前商店街が再び活気を取り戻すかというと、
いくら株式市場が活気づいても、
お金の流れがそこまで及ぶ可能性はどこにも見当りません。
地方によって新しい工場が建設されるニュースを
時々耳にしますが、
地方の時代が戻ってくる兆しはどこにも見当りません。
これこそ成熟社会の新しい動きの一つと見てよいでしょう。


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