中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2233回
地方の時代はもう終わったのです

成熟社会になると、
どうして地方都市の駅前商店街のシャッターが
軒並みしまってしまうかというと、
地方につくった工場での生産が採算に合わなくなり、
どこのメーカーも生産基地をもっとコストの安い
海外に移すようになったからです。

もともと日本が世界を相手に商売ができるようになったのも、
戦後の日本で物をつくる方が
アメリカやヨーロッパよりコストが安くてすんだからです。
メイド・イン・ジャパンが人気を博して生産が追いつかなくなると、
日本のメーカーは地方に眠っていた労働力を動員するために
地方に工場をつくるようになりましたが、
もうその頃は日本の労賃が高くなりすぎて
日本でつくるメリットがなくなりつつありました。
その頃、台湾、韓国の工業化が進み、
それが更に東南アジアや中国大陸にまで及ぶと、
日本国内の地方都市では全く歯が立たなくなってしまいました。

日本のメーカーは日本国内に固執していると、
競争できなくなるばかりでなく、
他の国々の同業者に海外の生産基地さえ奪われてしまいます。
やむを得ず、中国大陸とかマレーシアとかタイに工場をつくると、
日本国内で作る半分から三分の一くらいのコストで
できてしまいますから、
どうしたって国内の地方都市につくった工場は
閉鎖をするよりほかなくなります。

他に転用できればいいのですが、それが不可能になると、
工場ごと売りに出します。
一頃はそうした休閑地に
大きなショッピング・センターをつくる動きがありましたが、
これとて地方に住む人たちの所得が減らないことと、
町中にある商店街のお客をごっそり貰えることが前提です。
駅前の商店街がデパートも含めて店じまいをしたのは
そうした動きがもたらした現象ですが、
地方都市の工場閉鎖が続けば、
新しくできたショッピング・センターも足元がぐらついてきます。
ショッピング・センターも人減しをするようになれば、
地方で商売をするのはいよいよ難しくなります。
これも成熟社会に共通の社会現象の一つなのです。


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