第2249回
有名ブランドの腕前で5分の1の値段なら
温州で有名ブランドのOEMをやっている工場は、
同じ製品を横流しすることも禁じられていますし、
加工した製品を安い値段で売ることも禁じられています。
したがってミラノやロンドンの店頭と同じ値段で
温州の店先並んでいますが、
その隣りに行けば、ほとんど変わらない商品が
5分の1か、10分の1の値段で売られています。
地元の人はもとよりのこと、
観光客もびっくりして両方を見比べます。
それでも有名店のオーナーが一向に意に介しないのは、
注文をしてくれる業者に見せるためだからであって、
狙いは別のところにあるのです。
しかし、温州の加工業者は
有名ブランドの下請けをやったおかげで、
うんと腕もあがりましたし、
世界的レベルの製品を作るだけの資格もあるようになりました。
その実力をもとに
自社ブランドを開発すればよさそうなものですが、
それを有名ブランドにまで育て上げるのには
かなりの根気が必要になります。
軒を並べているファッションの店を一軒一軒歩いてみると、
「うん、この店には個性があるな」
という店にぶつかることがありますが、
そういう店にはお客たちが結構集まっています。
でも商品の値段は
有名ブランドと肩を並べるわけには行きません。
安売りだけで勝負している店に並べれば、
50%とか倍くらい高い値づけがされていますが、
それでも若いお客が結構集まるのは、
お客がちゃんと評価してくれている証拠です。
それが有名ブランドと質的には劣らないけれど、
値段が10分の1から5分の1ということになると、
東京で日本製を買うのと質的にあまり変わりはありません。
それでいて日本の3分の1か、
5分の1で手に入るということになると、
誰でもあらぬことを考えてしまいます。
ユニクロが売っているものよりもうんと手のこんだもので、
ユニクロが手がけることのできないものが
デパートで売られている5分の1か10分の1の小売値段とすれば、
少し頭の回転のいい人なら
何とかひらめくものがあるのではないでしょうか。
むろん、そのまま日本に持ち帰って
売れるというものではありません。
私が温州に行く氣を起すのも
そうしたヒントを楽しむためです。
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