中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2367回
国境はもうすぐなくなると思いませんか

人の嫌がることを意地になってやる人と、
それに拍手を送る人は多いけれど、
人のやれないことをやる人はほとんどいません。
日本の政治家たちを見ていると、そういう印象を深く受けます。

8月15日の終戦記念日が近づく頃、私はロシアに行っていました。
行く前に北京に立ち寄ると、
北京で働いている何人もの日本人から
「小泉さんは靖国神社に参拝するんでしょうね。
とばっちりを受ける私たちはどうすればいいんでしょうね」
と訴えられました。
「大したことではないですよ。
すぐにすぎてしまうことですから」と私は慰めましたが、
国境をこえて新しいアジアを目指して働いている人たちは
その度に不安な思いをさせられるのです。
こういうのを「心の問題です」というのでしょうか。

近頃、愛国心をかきたてるような議論が
ジャーナリズムを賑わしています。
日本だけでなく、中国でも殊更に目立っています。
もう国境をこえて行ったり来たりする人が激増して、
どこに国境線があるかも定かでない時代だというのに、
あるいはそういうところまで来てしまったからなのか、
愛国心を喚起する必要を感じている人が多いようです。
徳川幕府ががたついた時にも、各藩でそういう動きがありました。
その頃の国は徳川幕府ではなくて、会津や土佐や長州や薩摩でした。
自分たちの属している藩の利益に固執しなければ、
国を売る者と罵られたのです。

日本からアメリカに飛行機でとぶ途中に
日付変更線というのがあります。
地図を見るとはっきり線がひいてあります。
そこを通過する時、機内のアナウンスが
「只今、日付変更線を通過中です」と乗客の注意を喚起します。
或る有名な日本の女優さんがそれをきいて急いで窓をあけて
「どこに日付変更線があるの?何もないじゃないの」
と言ったという笑話があります。
いまに国境線もそれに近づくことは目に見えています。
それでもお互いにいがみあうことにあなたは固執しますか。


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2006年9月2日(土)

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