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第2374回
人づくりは一生かけてやる仕事です

私の好きな金言の一つに
「一年樹穀、十年樹木、終身之計莫如樹人」
というのがあります。
読んで字の如く、穀物を植えるのなら一年で足ります。
樹を植えてちゃんと育つのには十年かかります。
でも人を育てるのは一生かかりますというほどの意味です。

この金言にぶっつかった時、
私はすぐに周樹人、周作人の兄弟を思い浮べました。
阿Q正伝を書いた作家の魯迅は
「筆をとるより逃げるのに忙しい」人生を送った人ですが、
共産党の天下になってから先覚者として崇拝され、
その生まれ故郷の紹興に行くと、魯迅記念館があります。
その魯迅の本名が周樹人で、
弟の周作人は北京大学の先生をやっていました。
兄弟にそういった名前をつけたところを見ると、
学のある父母の下に生まれたことがうかがわれます。

近頃は金言集というのがよく出版されます。
私も「自分の座右の銘になるような名言があればいいなあ」
と思って、古代名句字典とか、
成語大辞典とかいった類の本に出会うと、
片っ端しから買い求めました。
でも昔から親しまれてきた名句金言を見ても、
ほとんどが時代遅れで、
いまの時代を生きる私たちにピンと来ません。
仕方がないので、諸橋漢和大辞典をはじめ、
漢学の辞典をそれこそ一頁目からめくりはじめて、
辛じて現代人にわかってもらえる形にしたのが
種字林の金言名句集です。
「一冊の本にしましょう」と出版社からも催促されているのですが、
いまだに手つかずのままになっています。

以上は余談ですが、
年を食うに従って人づくりに対する関心が深まってきます。
私が「ハイハイQさん」の中で、
学校づくりのプランをしょっちゅう取りあげるのも、
そうしたことが私の頭にひっかかっているからです。
私が日本語学校をやっていることは
台湾や上海ではよく知られていますが、
私が手がけてうまく育たなかった学校はその10倍以上もあるのです。
本当に人づくりの仕事は容易ではありませんね。


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2006年9月9日(土)

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