中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2396回
国営企業の株を買うな、その一

中国経済の発展にとって最大の弱点は
中堅幹部がうまく育たないことだと申し上げましたが、
それ以上に発展にブレーキをかけているものがあります。
それは大企業の中にはびこっている官僚主義です。

もともと大企業の大半がついこの間まで国営事業でした。
国営事業は人事権が政府によって握られていますから、
市場を相手の商売をしていながら、
董事長(会長)、総経理(社長)は
お客の方を向いて仕事をするよりは
政府の方を向いて仕事をしてきました。
その国営事業が持株の一部を放出して
上場企業に変身しましたが、
大株主が国ですから
何をやるのにも大株主の顔色を伺うことに変わりはなく、
証券市場で株を拾った零細株主のことなど
頭にあるわけがありません。

石油とか、石炭とか、有色金属とか、主として資源を扱う業種は、
その独占性と政治力に物を言わせて
何とか利益をあげていますが、
家電とか、繊維とか、不動産のように
競争の激甚な分野だとたちまちどん尻を走ることになります。
ですから、中国で株を買う場合、
私が第一に考慮することは、
お上みの顔色を伺う企業であるかどうかということです。

たとえば、上海の陸家嘴開発とか、
外高橋とか、北京北辰とか言った不動産会社は
またとないロケーションにありますから、
三井不動産や三菱地所でいい思いをしたことのある人なら、
誰でもとびつきたくなってしまいます。
私も将来のアジアのマンハッタンになるところだと早合点して、
陸家嘴にビルを建てた関係もあって、
すぐに陸家嘴の株にとびつき買いをしたことがあります。
ところが、待てど暮らせど上を向く気配もないので、
役人上がりによって運営されている会社では
駄目なんだなあとやっと気がつき、
あきらめて売ってしまいました。
いくら有望な業種でも、
お役人によって運営されている企業には
近づかない方がいいんだなと、
その時、やっと悟ったのです。
中国にはこの手の企業がうんとあります。


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2006年10月1日(日)

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