中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2666回
社長の取り分がない業種もあります

観光事業は思ったほどお金が儲からないから、
株式投資の対象としてはあまり魅力がない
と私は言いましたが、
世の中が豊かになると、観光に行く人はますますふえます。
1人当り観光に支出するお金もふえますから、
「そんなわけがない。
必らず次の成長産業になる企業の一つや二つはある筈だ」
と反論する人もあるに違いありません。

日本でも海外旅行が自由化されると、
それぞれの財閥の系統をひく観光会社が
上場をするスケールまで成長をしました。
たまたまそうした業者で働いている人がいて、
その内情と苦労をよくぐちっていたので、
これは派手な割りにお金の儲からない仕事であることに
気づいたのです。
ですから友人がこの業界に進出しようとした時も、
私は反対をしたし、
別の人から出資を誘われた時も私は勧誘に応じませんでした。

その頃、私は日本経済新聞に「サラリーマン出門」という
脱サラをすすめるエッセイを連載したことがあります。
それを読んで勤めていた会社を辞めた青年が
私のところへ相談に現われました。
「いままで何をしていたのですか」と尋ねたら、
「旅行社で添乗員をやっていました」と言う。
「で、次に何をやる積りですか?」とききかえしたら、
「まだ決めていません」
私がびっくりすると、
「どうせ辞めると決めたのですから、
辞めてから考えた方が真剣になると思ったのです」

言われて見れば確かにその通りで、
そういう思い切りのよい人に対しては、
こちらも親身になって手伝ってやりたいなあという気を起します。
そこで
「添乗員をやっていたとなると、
次に選ぶ仕事も旅行と関係があるのですか?」
「そういうことはあるかも知れません」
私はもう一度、びっくりして
「旅行業は将来のビッグ・ビジネスですが、
旅行社だけはやめて下さい。
従業員のサラリーを払うのが精一杯で、
どんなに働いても社長の取り分がない業種ですから」
と私はあわてて押しとどめました。


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2007年6月28日(木)

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