中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2667回
日本にもあった旅行ビジネスの動き

でも人間は一ぺん覚えた職業が身につくと、
どうしても同じ職業にこだわります。
証券会社を辞めた人はまた別の証券会社に勤めるし、
出版社を辞めた人は
必らずのように活字と関係のある仕事場を探がします。

添乗員を辞めた青年も、あちこちとびまわりましたが、
結局、旅行業から完全におさらばすることができず、
旅行ガイド・ブックの出版をやることになりました。
といっても出版社の創業にたずさわったわけではなく、
当時始まったばかりのツアーを企画する各旅行社に、
旅行社がツアーの参加者に無料で配布する
ガイド・ブックをつくって納める仕事をはじめたのです。
ツアーに申し込むと、
出発する前に旅行社に集まって説明会が行われます。
その時に、アメリカならアメリカ、タイならタイ、
トルコならトルコのガイド・ブックが一人一人に配られます。
大きな旅行社になると
自社でつくられたように印刷されていますが、
小さいところはゴム印で押してあるところもあります。
つまりツアーの隆盛を見越して、
旅行社が無料で配るガイド・ブックを専門に編集して
出版するビジネスをはじめたのです。
それぞれの旅行社にして見れば、
できることなら自社出版をしたいところですが、
あれこれ計算をして予算を組んで見ると、
とてもその値段ではつくれなかったのです。
無念に思いながらも、各旅行社が買ってくれたおかげで、
小さな事業ですが、年に5百万冊も売れるようになりました。
旅行ブームの盲点をついたニュー・ビジネスの一つですが、
一時は上場のできるスケールに成長できるかも、
と思わせる大へんな勢いを見せていました。

しかし、旅行が更に盛んになると、
旅行ガイド・ブックが出版界を席巻し、
プロでない出版社の中途半端な内容では
通用しなくなってしまいました。
新しいブームは新しいアイデアや
新しいビジネスを誕生させますが、
それが定着するかどうかは時間がたってみないとわかりません。
中国もちょうどそういう時期まで辿りついたぞ、
と私は見ています。


←前回記事へ

2007年6月29日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ