中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2676回
香港ドルのペッグ制はどうなるの

中国大陸の香港化がすすむにつれて、
香港の将来は一体どうなるのかと心配になる場面もありました。
自由港であること、税金が安いこと、
そして、工場が内陸にあって
香港がその出店になっていることが香港の特長でしたが、
政府の経費が過大で財政が悪化する場面もありましたし、
広東省の工場地帯が自分たちの港から直接、
輸出をする動きも出てきたので、
香港のはたす役割がなくなるおそれが見えてきたのです。

しかし、深圳や珠海から直接、輸出をする動きが顕在化すると、
香港は世界中から中国に投資をする
資本の調達市場に転換する方向に動き、
逆に資本の調達をする必要に迫られた内陸の企業が
次々と株を香港で上場するようになり、
香港は世界でも稀れな資本市場に成長しはじめました。
このまま進めば、中国は世界最大の工場地帯になるばかりでなく、
世界最大の消費市場になることも目に見えていますから、
世界中のお金は一旦、香港に集まって
そこから大陸へ動くようになります。
そうしたお金の動きに対する障害は
最大限度に除却されていますから、
諸外国と中国大陸の間のショック・アブゾーバーの役割を
香港がはたすようになっています。

たとえば遺産税は全面廃止されていますし、
お金がどこに動こうとハードルは一切ありません。
それは外国人にとってだけでなく、
中国人にとっても同じことです。
香港は中国人にとっても最大の
タックス・シェルターになりつつあるのです。

そういった意味では香港が
「そのところを得た」ことについては議論の余地がありませんが、
人民元の切り上げの進行して行くプロセスで
はたしてドルに釘づけにされたペッグ制が
今後も維持できるものかどうか。
たとえば人民元が限りなく1ドル4元に近づいて行くプロセスで
香港ドルの切り下げが続くことに不都合が生じないものかどうか。
中国株の投資対象は大陸の企業ですから、
当分人民元高に比例して上へ動くでしょうが、
それが香港ドルにとって不利にならないものかどうか。
恐らく人民銀行にとっても香港政府にとっても
真剣に取り組むべき課題になりつつあるに間違いはないと思います。


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2007年7月8日(日)

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