中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2727回
どうして危機感がないのでしょうか

戦後の日本の経済成長は
もともと立派な政治家によって主導されたものではありません。
職人的気質の日本人が餓死の危機感に背中を押されて
工業化の道を一心不乱になって走ったおかげです。
政治家はお猿電車のお猿のように、
機関手のような顔をして乗っかっていただけだというのが
私の見方です。
そのお猿に電車の乗り方を教えたのはお役人ですが、
のちにお役人が大ぜい昇格してお猿の椅子に坐るようになったのは
皆さん、ご承知の通りです。

お役人がお猿に昇格した時はまだそれぞれに使命感もあり、
緊張感もありましたが、
役人上がりのお猿でも2代目になると、
役者や学者や医者の2代目と同じように
見様見真似で一通り踊れますが、
使命感と緊張感には事欠きます。
江戸城の中も昔はこれと同じだったに違いないと
思わず想像力を逞しくしてしまうような現象が
いまの日本に澎湃として起っています。
心配してもなるようにしかなりませんが、
一番心配になるのは日本の経済が
だんだん地盤沈下して行くのではないかということです。
その次が隣りづきあいをどうする積りなのかということです。

日本人は物づくりの天才で、
黙っていてもこの水準は維持できるという意見をよく耳にしますが、
横綱も年をとれば体力が衰えるし、
少し油断をすると投げとばされてしまいます。
多くの発明や改良は生産の現場で思いつくものですから、
いつまでも同じ舞台で、
同じ人のところにとどまっていると思ったら大間違いです。

また戦後の日本の発展は
日本に打ち勝ったアメリカが自分たちの市場を開放してくれたことと
その核の傘の下で
日本の平和を守ってくれたことによって達成されたものですが、
その骨組にかなりガタが来ています。
その一方で、日本はアジアの中にいながら、
アジアの蚊帳の外に自分の国の位置をおいてきました。
その高姿勢が崩れおちるところまで来ています。
そうしたことに危機感を抱かないのは
いつも地震に揺られて不感症になっているせいでしょうか。


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2007年8月28日(火)

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