中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2911回
アメリカの銀行はバクチの胴元

私の「マネーゲーム敗れたり」は10年前に書いたものですが、
あまりにもサブプライム・ローンに端を発して現在、
全世界に波及している金融不安を予想した書き方になっているので、
できれば邱友会に参加する人にでも読んでもらいたいと思って、
出版元のPHP研究所に問い合わせたところ、
在庫は1冊もないという返事でした。

10年前にバーツに起った大暴落は、
タイに対する経済開発がはじまり、
多くの企業が開発資金のかなりの部分を銀行借入れに頼ったところ、
開発が一巡して生産がスタートしても
直ちに国際収支が改善されず、
バーツが売られ気味の時に起ったものです。
そのきっかけは弱いバーツに目をつけた投機筋が
一せいにバーツを売り浴びせたからですが、
そうなるとドルで産業界にお金を貸した銀行が
あわててドルの回収に動きます。
今までは返済期限が来れば、期限の書き換えですんだものが
いきなり返済を迫られますから
お金を借りている企業は大あわてにあわてます。
返済能力のない企業は倒産に追い込まれますが、
多少でも余裕のある企業は値上がりするドルを買いにまわりますから
タイの中央銀行はドル不足におちいって倒産に追い込まれます。
そこを日本政府やその他IMFなどに助けられますが、
工業化の開発資金として貸したのもドルなら、
引き揚げにかかったのもドルですから、
実際の立役者はどの銀行にしろドルの仕業だということになります。
なぜそんなにたくさんのドルが
世界中を暴れまわるようになったかというと、
もとを言えばアメリカ人が自分たちで物をつくらずに、
他国の人につくらせて
自分たちはその代金をドルを刷って支払ったからです。
他国の人の手に渡ったドルをまたアメリカに集めて、
ドルでドルを儲ける荒稼ぎに従事するようになってから
もう既に30年がたとうとしています。
10年前、私が予言したことが10年たって
もっと大きなスケールでくりかえされているのです。


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2008年2月28日(木)

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