中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3004回
宗教と政治を重ね合わせるな

四川省の大地震の惨状を毎日のようにテレビで見せつけられたら、
誰だって同情を禁じ得ないし、
同時に自分の身にふりかかった災難でなくてよかったと
胸を撫でおろします。
もちろん、日本政府もそれなりのことはやっているし、
私たちも身分相応のお手伝いはさせていただいています。

しかし、その半面、
表立ったポーズこそ見せていませんが、
「ざまあ、見ろ」と心の中で
舌まで出している人も少なくはありません。
この手の人はどこの国にもいるもので決して珍しくはありませんが、
日本ではちゃんとした知識階級の中に意外と多いようです。
隣同士だと喧嘩のタネがつきないことは
歴史が証明している通りですが、
グローバル化によって国境の壁が次々とくずれおちて行く時代に
どうやって生きて行く積りなのだろうかと
こちらが逆に心配になってしまいます。
とりわけオリンピックを前に、
チベットで暴動が起った直後のことですから
事情を知らない人の中には
「それ見たことか」
と嘲笑う人もいますが、
地震の直撃した一帯に住んでいる少数民族は
チベット系の人が多いのです。
私も成都でレストランをひらくまでは全く知らなかったのですが、
チベットで暴動が起ると成都に住んでいるチベット系の人たちは
不慮の騒動にまき込まれることをおそれて
外出することを怖れます。
3軒ある店のうち2軒の客の入りが急に悪くなって、
はじめて成都には
チベットの人がたくさんいることに気づいたのです。
地震による難民の救済に出身別の差別があるわけがないことは
政府の力の入れ方を見てもわかります。

中国政府のやり方が常に正しいわけではもとよりありませんが、
いまチベットで起っていることは、
宗教と政治の争い、
つまり支配権をめぐって坊さんと役人の間で起っている争いです。
それをチベット人と漢民族との争いに重ねあわせたところに
ボタンのかけ違いが起っているのです。


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2008年5月31日(土)

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