中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3069回
頑固な伝統料理にも新しい波が

中国料理の中で私が一番親しんできたのは広東料理です。
家内が広東人であることと、私が香港に長く住んで、
本場の広東省よりも更に一歩先へ進んだ
香港風の広東料理と長くつきあってきたからです。
広東料理の次が上海料理になったのは、
上海にビルを建てたり、上海で日本語学校をはじめ、
さまざまのニュー・ビジネスを手がけてきたせいもありますが、
海外と一番早くから行き来をするようになった
中国の都市が上海であり、上海料理は国際的に受け入れられるほど
同じ中国料理でも改善改良が進んだからです。
わけてもこの10年間におけるレベル・アップには
目を見張らせるものがあります。

それに比べると、蜀の国四川は歴史も古く、
他国の影響を受けつけない気質が色濃く残っています。
たとえば成都のイトーヨーカ堂の5階で
フード・センターをずっと経営していましたが、
何十軒という各地、各国の店を集めて競ったにも拘らず、
最終的にはどこの店も
唐辛子をドッと入れた四川鍋を出す結果になってしまいました。
麻辣(マーラー)という
少し舌がしびれるような辛さに何千年も慣れてきた人々にとって、
普通の味つけでは物足らなかったのではないでしょうか。
ですから、外来のどんな料理でも、
思わず咳込んでしまうように辛い四川料理を
駆逐するには至らないどころか、
気がついて見たら逆に蜀の国から追い出されてしまっているのです。

それでいて十何年前に私がはじめて成都を訪問した頃、
四川省長さんや成都市長さんたちに招待されてご馳走になった
代表的な四川料理屋の店で、
いまの成都の人たちの間で昔の人気を保っている店は
もう一軒もないのです。
同じ料理で味つけにも何の進歩もない店は
次の時代の人々から必らず見捨てられる運命にあります。
現に私が次にひいきにするようになった店も
同じことのくりかえしで、
5年もたつとまたこちらが飽きて寄りつかなくなってしまいます。
四川料理のような頑固な伝統料理でも
ヌーベル・キュイジーヌを待望する時代が来ているのです。


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2008年8月4日(月)

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