中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3075回
輸出の落ち込みは思わぬ天の助け

オリンピックを前にして中国経済の成長率が
第二四半期で少しばかり落ちました。
落ちたと言っても前年比10.2%で依然として
2桁台にありますから、
景気が後退するほどの落ち込みでありませんが、
新聞記者たちの頭の中にはオリンピックが頂点になって
中国経済の後退がはじまるという先入観がありますから、
2桁の成長であっても、
「それ、後退がはじまった」
と大々的に報道しています。

本当は少々落ち込みがある方が中国にとっては好都合なのです。
落ち込んだ分を国内消費がカバーする体制ができているのに、
その上、輸出が更に伸びたら、
中国の過剰流動性はとどまることを知らなくなって、
更なる規制を追加しなければならなくなります。
実際にはアメリカで景気後退が起っても、
消費の後退は贅沢品の売上げに影響して、
メイド・イン・チャイナのような安物にはさほど影響しませんから、
数字にそんなに大きな差は出てきません。
でもドル安と原料高と人件費の高騰で
輸出業者の採算が悪化しますから、
輸出はかなり後退します。
そうすれば政策的な規制をゆるめる口実もできるし、
不動産や物価の値上がりにブレーキもかかりますから、
国として政策転換ができるようになります。
そこで景気振興のために公共投資に力を入れれば、
地震からの復興作業と環境整備などの公共事業が牽引車になって
景気を持続させることができるのです。

はたしてそんなにうまく行くかどうかはオリンピックのあとに
実際にどんなことが起るか見てみるよりほかありませんが、
ドルが今後も貯まりすぎることは、
日本にとっても中国にとっても決してよいことではありません。
日本は既に1回そういう経験をしましたのでもう1回、
同じ愚をくりかえすとは思えませんが、
中国が過剰流動性の対策を放置して、
貯まった外貨で海外投資をやれば、
日本と違った形で同じ愚をくりかえす可能性が
ないわけではありません。
そうした可能性も考慮に入れて
中国株投資の手を打つ必要があります。


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2008年8月10日(日)

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