中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3098
迷った時は出発点に戻って古典を読め

私が「中央公論」誌の常連執筆者として
その一角に陣取っていた頃は、
(と言ってももう40年以上も前のことですが)
私はよく中央公論社に社長の嶋中鵬二さんを尋ねて行きました。
私より一つ年上で同年代だった気安さもあったのですが、
時間さえあれば嶋中さんはよく私の相手をしてくれました。

社長室に行くと、何もやることのない時、
嶋中さんは昔の古い中央公論や婦人公論の雑誌を
よくめくって読んでいました。
私が「どうしてそんな古い雑誌をめくるんですか」ときくと、
「それが案外、役に立つのですよ。特に自分の頭の中が空になって、
いくらひねっても知恵の出てこない時はね」
とニコニコしながら嶋中さんは説明してくれました。
「いくら時代が変わっても、人間の物の
考え方や知恵はそんなに変わるものではない。」
それぞれの時代の人たちを相手に
昔の人が思いついて対処したことは何十年、
何年たった今日でも意外にヒントになる。
それが新しいアイデアのとっかかりになるんです。
ですから、逆さに振っても知恵の湧いてこない時は、
昔の社長や編集長が搾った知恵が意外と参考になるのですよ」
そう言われてなるほどと合点したことがあります。

いま世の中は新しいターニングポイントにさしかかっています。
昔と同じことが起っているわけではありません。
でもいまの人が昔の人より知恵があるとは思えませんから、
昔の人がこんな場合、どういう知恵を働かせたか、
参考にするのは案外、役に立つのではないでしょうか。
もう古典になってしまったような株やビジネスの本を
とり出して読んで見るのも一案です。
私の書いた本の中にもそういう
ヒントになる本が何冊かはあります。
私自身にとって自分が昔書いた本は
大して参考になりませんが、
株とは何なのか、利回りとは何なのか、
成長株はどうして生まれたのか、
10年20年たって見てどんな人が一番産をなしたか、
もう一度振り返って出発点に戻ることは
必要なことではないでしょうか。
そう思った途端に嶋中さんの言ったことを思い出したのです。


←前回記事へ

2008年9月2日(火)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ